*

フィンランド語講座

北海道フィンランド協会

Tsugaru – kulkija käy kotona 『津軽』- 放浪者家に帰る

私にしては非常に稀有のことなのですが、4月27日の「ブログ」欄でやってみようかと表明した、太宰治著『津軽』のフィンランド語版をGW中に実際に読了することができました。分からない単語や表現、忘れてしまった語など山ほどあるのですが、原書で何度も読んだことがあるおかげで、蟹田でのSさんの接待ぶり、竜飛の旅館での親友N君との一夜、小泊での元子守のたけとの再会などの有名な場面を思い出しながら読むことができました。

日本独特の風習や食べ物など、訳者のKai Nieminen氏はさぞフィンランド語訳に苦労したことと思います。訳書の最後には10ページほどの説明部分があり、日本の旧国名、歴史上の人物、フィンランドではポピュラーでない食べ物などについて解説が加えられています。特に最後に注目して、数語を紹介します。

アンコウ(鮟鱇) krotti
ワラビ(蕨) sanajalka
ゼンマイ(薇) röyhysaniainen
フキ(蕗) ruttojuuri
ウド(独活) ruoka-aralia
ナメコ(滑子) pyökinkantosieni

フィンランド語も知らなかったり忘れてしまっていた語ばかりですが、蕗と独活以外は漢字でも書くことができず、日本語の難しさと、そして奥深さを感じました。

sima シマ

シマ(sima)はメーデー(vappu、フィンランドでは主に高校卒業資格取得者や大学生のお祭りで祝日)の頃よく飲まれるノンアルコール~発酵の過程で生じた微量のアルコールを含む炭酸飲料です。留学時代、ルームメートのフィンランド人からその存在を知り、彼が作ってくれたsimaを飲んだ覚えがありますが、それから長年この味から離れていました。おうち時間が長くなったので、久しぶりに作ってみようと思い立ちました。

室温で発酵中(瓶詰めする前段階)

作り方は簡単で、約2リットル弱のsimaを作るのに、
水:1.5リットル
レモン:小1個
ドライイースト:2g
グラニュー糖:100g
ブラウンシュガー:100g
レーズン:適量
1)半量の水を沸騰させ、2種類の砂糖とスライスしたレモンを加え、砂糖が完全に溶けるまで混ぜる。
2)残りの水を加え、人肌くらいの温度になったらイーストを加え、完全に溶かし、24時間そのまま室温で放置。
3)きれいに洗ったペットボトルに濾して7~8分目まで(発酵するので)移し、少量の砂糖とレーズンを数粒加える。
4)室温で3日くらい、冷蔵庫で1週間ほど冷やしたら完成。レーズンが浮いてきたらできあがりなので、その後は冷蔵庫で保存。

1回目はイーストの量が少し多かったせいかやや強炭酸のsimaになりましたが、まあまあうまくいったと思います。現在2回目のものが冷蔵庫で発酵中です。ヘルシンキのお土産屋さんノルディスからも、sima製作キットを買ったので、後日作って飲み比べてみようと思います。

「発酵する」という動詞は、「行ってくる」という意味で入門~初級レベルで習うkäydäを使い、「発酵」はその動名詞(テキストss1で勉強している人は17課で履修)käyminenを使うということを知っていると便利です。

Osamu Dazai 太宰治

『魚服記』中の滝のモデルとされる「藤の滝」

太宰治は高校生の時に結構ハマり、20代でも無性に読みたくなった時期があり、その後すっかり縁が切れていましたが、2012-13年度に北大に留学していたEemeliから、太宰治の『津軽』がフィンランド語訳されていることを知り、2013年の3月と2015年の桜の季節に彼と共に、太宰治と『津軽』にゆかりのある地を巡る旅をしました。

『津軽』にゆかりのある地を訪ねる太宰ファン、あるいは地元の研究家は結構いるようで、そういう人たちの訪問記などを参考にしながら、奥山へレンタカーで分け入って、たとえば『晩年』中の『魚服記』のモデルとされている滝を探したりしました。3月の旅行の終盤ではEemeliは津軽鉄道の津軽中里から五所川原までストーブ列車で移動、私は昔乗ったことがあったのでレンタカーで移動、列車も車も猛吹雪で一時立ち往生、列車の方が少し立ち往生の時間が長かったですが、無事に五所川原の駅で再会できて安堵したことなどが懐かしく思い出されます。

現在札幌の中島公園にある北海道立文学館で「太宰治 創作の舞台裏」という特別展示が行われています。先週中島公園近くにあるフィンランド協会で事務処理があった時のついでに、この特別展示を見てきました。根気のない私にしては珍しく長く1時間くらいは会場にいたでしょうか。その間来訪する人も2,3人で、ゆっくり創造のプロセスを鑑賞することができました。太宰ファンでなくても、興味を引かれる展示だと思います。

Kai Nieminen訳のTsugaruは、このタイトルではフィンランド人が何のことかさっぱりわからないであろうことを考えてKULKIJA KÄY KOTONA「放浪者家に帰る」的なサブタイトルがつけられています。GW中に何年かぶりにフィンランド語で『津軽』読んでみようかな。

 

jättiläisbambunverso 巨大タケノコ

長さ(高さ)40cm超え!

お向かいさんからタケノコのおすそ分けをもらいました。千葉県の親戚から10本くらい送ってきたとのことですが、このサイズのタケノコが10本入った箱は相当大きなものだったのではないでしょうか?私は北海道で良く獲れる山菜のネマガリダケ(チシマザサ)は好きですが、孟宗竹のタケノコは何かサイズばかり大きくて固いようなイメージがあって今まで敬遠していました。ところがこの巨大タケノコ、本当に柔らかくえぐみも全くなく、タケノコに対する見方が変わりました。

「竹」bambuに属格(「~の」)のサインの-nをつけ、これに「新芽、若芽」を意味するversoをつなげたbambunversoが「タケノコ」に相当します(bambun versoと分けて書く場合もあり)。これに「巨大な」をあらわす複合語の先頭部分jättiläis-(あるいはjätti-)を付けると「巨大タケノコ」ということになるでしょうか。

ダイオウイカはjättiläiskalmari(kalmariは「イカ」)、ジャイアントパンダはjättiläispanda(単にpanda、isopandaもポピュラー)となります。

フィンランド語木曜初級コースの19名がテキストsuomea suomeksi1を修了しました!

2年前の初回授業(2019/4/11)

2019年度にフィンランド語の受講を開始した皆さんを中心に、過去受講歴があったり自学自習で多少の知識があり今年度からZoomを利用した遠隔授業授業で勉強を再開・継続された皆さん、合わせて19名が入門・初級用のテキストsuomea suomeksi 1「フィンランド語をフィンランド語で1」を先週の今年度最終授業で修了されました。おめでとうございます!Onneksi olkoon!

思い返せば、2年前は過去最高の40名で入門コースがスタート(対面授業)、残念ながら多くの方がこの2年の間に受講を断念されてしまいましたが、一方コロナ禍による遠隔授業が幸いして、対面授業の会場には来ることのできない札幌圏外の受講者が増え、今回の修了者のうち3名が本州在住、1名が札幌圏外の道内在住者を占めるまでになりました。今回は過去最大の修了者数だと思います。

19名の終了者は以下の通りです:Nanamiさん、Kazueさん、Kozueさん、Kusumiさん、Tomomiさん、Moekoさん、Nonoさん、Yukiさん、Yuukoさん、Rieさん、Masaeさん、Saekoさん、Masakoさん、Sumikoさん、Aiさん、Yumiko Bさん、Yumiko Hさん、Kimikoさん、Sachieさん。リストアップして全員女性であることに気づきました。

何の権威もありませんが、修了者には修了証をお送りします。皆さんと一緒に祝杯を挙げることができないのが残念ですが、修了者のほとんどが引き続き来年度「中級コース」で勉強を希望されていることを嬉しく思います。今度は概ね1年半後、中級~上級用テキストsuomea suomeksi 2の修了を共に目指しましょう!

maailman onnellisin maa 世界で一番幸せな国

ともあれ、Eläköön Suomi!「フィンランド万歳!」

先週末の国際連合(YK=Yhdistyneet kansakunnat)の世界幸福度報告の中で、フィンランドが4年連続「世界幸福度ランキング」1位に輝きましたね。関係者としては嬉しい限りですが、当のフィンランド人たちはそんなに自慢することも意識することもなく、「フィンランドに生まれたのは宝くじに当たったのと同じくらい幸運だ」と考えながらも、税金の高さや政府のやり方に結構文句を言っています。

「世界で一番幸福な国」はさまざまな指標を数字化したものを基にランキングをつけているようですが、私は正直その順位、指標や点数化にはあまり興味はありません。むしろフィンランドを含めた北欧5か国がなぜ常に上位にランキングしているのか、その背景となるものにとても興味があります。先週金曜日のHIECC主催のオンラインセミナーで、ヘルシンキ在住のフィンランド日本協会副会長の下村有子さんがおっしゃっていましたが、他者や政府に対する「信頼」度の高さが、少なくともフィンランドでは平時でも、そしてこのコロナ禍のような事態の中でも、強くブラスに働いているように感じます。

フィンランド語のネタで締めくくりましょう。「幸せ(名詞)」はonni、「幸せな(形容詞)」はonnellinen、そしてその最上級はonnellisinで最後の-inがフィンランド語では形容詞の最上級のサインとなります。これは早ければ1年後くらいに木曜コースの皆さんがテキストsuomea suomeksi 2の12課と13課で学ぶことですが、英語と違ってフィンランド語は形容詞の最上級-inからさらに単数14格、複数15格に理論上は格変化しますので、英語の比較表現に比べると圧倒的に難しく、テキストでもずいぶん後になってから学習することを余儀なくされる一つの要因となっています。

「世界」はmaailma、maaは最初「国」の意味で多くの学習者が習う語ですが、ここでは「土地、地面」。一方ilmaは「空気」ですから、フィンランド語の「世界」=「土」+「空」という構成ということになります。

joka tapauksessa / anyway / eniwei いずれにせよ

菅総理はよく「いずれにせよ」という言葉を国会答弁などでよく使っていますよね。「また言ってるよ」とちょっと冷ややかに聞いていることが多かったのですが、最近自分の授業録画を見ていたら、全く無意識に、しかも頻繁に「まあ」といっていることに気づき、「人の振り見て我が振り直せ」と反省しました。

「いずれにせよ」に相当するフィンランド語はjoka tapauksessaで、たまに使うのには便利な表現です。ただしこの言い回しは長いので、留学生連中は英語のanywayをそのまま「エニウェイ」のように発音してよく使っています。口語だけに許される表現で、私たちフィンランド語学習者は格好つけて真似する必要もないでしょう。チャットのような場面ではフィンランド語の発音に合わせてeniweiなどと書くこともあるようですが、こちらはなおさらです。フィンランド人が使っている場面で理解できれば十分です。ただし語の長さや発音のしやすさから、近い将来、英語由来のフィンランド語として認知される可能性はあるかと思います。

oikoluku 校正

ロシア・カレリア地方、冬の日没(2008年)

今日3月8日は国際女性デー(Kansainvälinen naistenpäivä)、特に旧ソ連圏の国の多くは公式な祝日としてこの日を祝うようです。フィンランド協会の語学講座も8割以上の生徒さんを女性を占めています。授業を進めるにあたって女性だから、男性だからと特に意識することはありませんが、フィンランド語学習の世界では昔から圧倒的に女性上位が続いています。男性も頑張りましょう!

新学期に向け、金曜上級コースのCさんと、入門・中級用テキストsuomea suomeksi 1の新語彙集を編纂中です。現在コピー代を頂いて頒布している語彙集は古い版のテキストに基づいている上に抜けている語も多く、整備の必要性を感じていましたが、Cさんは授業を受けながらコツコツ語彙の確認を行ってくれ、近日中に新旧の受講生に頒布できる準備が整ってきました。

私は集中力がないので、校正の仕事が苦手です。一方Cさんは校正の仕事を本職で行っているようなので、頂いた原稿の中にはほとんど綴りの間違いなどがなく感心してしまいます。苦手な作業とはいえ単語チェックを行う中で、いままで気付かなかったことに気づかされることも多々あります。たとえば、フィンランド語では単数形と複数形は異なった形をしていることがほとんどなのですが、水曜日を除く、-tai(英語の-dayに相当)で終わる曜日を表す語は、ほとんどの文法格で単複同形だということは今まで考えたことがありませんでした(ちょっとマニアックな話題だったかな)。

Cさんは中~上級用のテキストsuomea suomeksi 2の語彙集作成にも意欲を見せており、こちらの方は元々日本語版の語彙集がないので、もし完成したら大いに役に立つこと請け合いです。お楽しみに!

kunnon talvi 良い冬

さっぽろ雪まつりの国際雪像コンクールへも参加歴のあるVeijoさんの力作

少し長い引用なのですが、テキストsuomea suomeksi 1の22課に以下のような文があります。
Joulun jälkeen tammikuussa ja helmikuussa päivät ovat vielä melko lyhyet, mutta silloin on kuitenkin lunta ja silloin voi olla enemmän ulkona, vaikka onkin kylmää.「クリスマス後の1・2月は日(=昼間)はまだかなり短い、しかしその時期はは寒いけれども雪があるし、その時期はより多く外にいることができる。」

雪害に悩まされることも多い日本人にとって、雪は美しいものよりも厄介なものと考えることが多いかもしれません。日本人は「ホワイトクリスマス」を「そうなればロマンチックだし、クリスマス気分も盛り上がるし」位にしか考えていないかもしれませんが、フィンランド人にとって雪の全くないクリスマスはとても残念なものなのです。日の最も短い冬至の季節(=クリスマスの少し前)の、月も出ていない地面も真っ黒な夜を想像してみてください(特に田舎で)。一方満月で雪が積もっている夜なら明るさが、そして気分もまったく違います。

撮影:Ilpo Niskanenさん(Ouluで「白い桜の花のように見えましたよ」)

一方、テキストsuomea suomeksi 2の3課にはこんな文があります。
Vaikka ei minulla oikeastaan ole mitään talveakaan vastaan, jos on kunnon talvi, niin että on paljon lunta ja kova pakkanen.「でもたくさんの雪と厳しい氷点下の寒さがある良い冬なら、私は冬に対して実際のところ何も反対ではない(=文句はない)です。」

どんな天候不順の冬でも、冬至が過ぎればどんどんと昼間の長さが長くなっていきます。氷点下10度くらいまでなら赤ちゃんを日光浴に外に出し、氷点下20度位でも嬉々としてクロスカントリースキーを楽しむフィンランド人にとって、太陽の光は必須のもの、厳しい寒さは当然あり得るもの、そして最低クロカンスキーを楽しめるくらいの雪(もっとあってもよい)はぜひ欲しいものなのです。

2月14日の友達の日(ystävänpäivä)に送ってもらったメッセージやカードには、皆が判で押したように。今年は十分な雪があり、寒さも厳しい冬だと書いてきています。昨冬はラップランドのロヴァニエミ以南ではほとんど雪のないちょっと異常な冬だったそうなので、なおさらそう感じるのかもしれません。中央フィンランド・北部フィンランドでは氷点下20度、30度は当たり前、でも誰一人不平は言わず、「わざわざラップランドまでスキーをしに行く必要がないので大助かり」、「厳しい氷点下の寒さと雪を楽しんでいます」といったメッセージが並んでいました。

*写真はいずれもこの冬に撮影されたものです

 

Petra taas Sapporoon! ペトラ再び札幌へ!

フィンランドの郵便事情の悪さを反映してか、2月5日消印のハガキが数日前に届きました。2月14日のystävänpäivä「友達の日」に向けてのカードです。分かりやすい活字体で書いていますから初級コース以上の方は読むことができるでしょう。ウムラウト(äやöの上の..)の書き方が独特です。

少し難しいのは真ん中よりちょっと下のJos vain Japanin rajat aukeavat pääsisin huhtikuussa Sapporoon.「もし(jos)、日本(Japani)の国境(raja)たちが開き(辞書形aueta、タイプⅣ、k:Φの難しいkpt変化あり)さえ(vain)すれば、4月(huhtikuu)に札幌へ私は到着できるでしょう(辞書形päästä、タイプⅢ、pääsisinの-isi-は条件法[テキストss2の3課で履修])。」の文でしょうか。3行目のMinä sain hyväksynnän vaihto-opiskelijaksi…は「私は交換留学生(vaihto-opiskelija)としての承認(hyväksyntä、nt:nnのkptに注意!)を得ました(saada、タイプⅡ、過去形)」です。

2018-19年度にラップランド大学(ロヴァニエミ市)から札幌大学・札幌市立大学に留学していたペトラ・ヌルメラ(Petra Nurmela)が再び札幌へ戻って来そうです。今度は北海道大学への留学です。デザインやテキスタイルが専門のペトラが北海道大学で何を学ぶ予定なのか興味があります。ラップランド大学は現在日本全国に提携大学があると思いますが、再び北海道を選んでくれてとてもうれしく思います。小柄ながら、元気で明るいペトラの再来道を、大昔ラップランド大学に2年間留学した(一応)先輩として、楽しみに待っています。

ペトラ(左)、同時期北大に留学のサイヤと(2019年夏)