片瀬 康勝(かたせ やすかつ)
- 【フィンランドとの出会い】
- 初めて覚えたフィンランド人の名前:マッティ・ニッカネン
次に覚えたフィンランド人の名前:トニ・ニエミネン
ふたりとも、スキージャンプの名選手でした。
「フィンランド人って『~ネン』って名前の人が多いんだね」と母と話した記憶があります。 - 【フィンランド語との出会い】
- 札幌に住むようになってから、大倉山にジャンプを見に行くようになりました。2000年頃でしょうか、ネットでPC用のスキージャンプのゲームに出会いました。
お試し版では飽き足らずに、レジストレーションキーを購入。その際作者に「とても面白いゲームですね」というような事を英語でメールしたら次の日には返信がありました。
「フィンランド人って結構気さくなんだな」
「ところでフィンランド人って何語を話すんだろう?英語?ロシア語?スカンジナビア語?(そんな言葉はありません)」
そう思って仕事帰りに本屋の外国語教材のコーナーへ立ち寄りました。
そこで見た物は、色々な国の言葉の入門書や辞書の数々。「国の数だけ言葉があるのか?、いや、同じ言葉を話す人々がひとつの国を作っているのか?」 - この時は、「フィンランド語を身に付ける!」という確固たる意思があったわけではありません。
「話しのタネに」「シャレのつもりで」というごく軽い気持ちで独学でフィンランド語の勉強を始めることにしました。
最近でこそ何冊ものフィンランド語のテキストが出版されていますが、その当時に比較的手頃な値段で購入できたのは、「エクスプレスフィンランド語」というテキストだけで、しかも音声教材はカセットテープでした。
今のテキストにはCDの音声教材が付属しているのが普通ですし、ネットでフィンランド語のニュースを視聴するのも簡単。ダイヤルアップ接続でMD(若い人たちは知らないでしょうね、この単語)にYLEのニュースを録音し、繰り返し聞いていたあの頃とは隔世の感があります。 - 初めて開いてみたフィンランド語のテキスト。
読み方はローマ字読みでほぼOK、アクセントは常に語頭、冠詞もなく、名詞の性もない。
なんて簡単なんだろう、と思いました。
格変化についても特にこの時は難しいと思わず(本当に難しいと感じ始めたのは教えるようになってからです)、すんなりと勉強を始めることができました。
なぜか判りませんが、フィンランド語で「港」を意味するsatamaという単語が印象に残りました。
雪のちらつく、凍えるような鈍色の空と海を背景に、静かに停泊する船のイメージが思い浮かびました。英語とも日本語とも違う、そんなフィンランド語の港のイメージでした。
まあ実際には、防波堤や船着き場のある、日本と良く似た港の風景がそこにはあったのですが。
日本で言えば、富山や石川などの北陸地方について、かつて自分が抱いていたイメージに似ていたかも知れません。 - さて、独学でフィンランド語を始めてから1年程がすぎると、だんだん飽きてきます。
これではいけない、と思い、札幌市内でフィンランド語を勉強できるところがないかと探したところ、北海道フィンランド協会で、フィンランド語教室を開講している、とのことで、少し迷いましたが、電話をしてみることに。
講師は水本先生でした。授業は分かりやすく、面白かったですし、授業後にお誘い頂いた酒の席で伺うフィンランドやフィンランド語の話しが楽しくて、だんだんのめりこんでいきました。 - 講師を打診されたのは2007年のことです。
語学講座の他、フィンランド協会の仕事で忙しかった水本先生をいくらかでもお手伝いできれば、と思ったのと、そろそろ自分が学んできたことをフィードバックしていかなければならないキャリアと年齢だと感じていたことから、講師をやらせてもらうことにしました。
自身の受け持った初めての授業では、集まった生徒さん前で「皆さん、こんばんは」と言った瞬間に全身から汗が噴き出たのを覚えています。 - 【渡芬歴】
- 2回、合計で2週間足らずです。
フィンランド語の講師をやっています、なんて言うと、「留学していたんですか?」「住んでいたんですか?」って聞かれますが、人生のうち、日本にいなかったのは2度のフィンランド旅行の時だけです。 - 初めてのフィンランド旅行は2002年の冬です。
海外旅行自体が初めてで、しかも一人旅。空港からヘルシンキ中央駅へのバスの車内では、吐き気を催すくらい緊張していました。
この時の目的はジャンプワールドカップの開幕戦。フィンランド北東部にあるクーサモという街に行きました。人口が2万人足らずの街に、大倉山より大きい、きれいなシャンツェがあり、何千人もの観客がジャンプ観戦を楽しんでいたのが印象に残りました。
クーサモではオーロラを見ることもできまた。「すごい!」という言葉しか出てこないほど、自分の目で見るオーロラは素晴らしいものでした。
この時の旅行では、何人かの人と話しをする機会がありました。皆それぞれ、言葉の端々に自分の国を思う気持ちが感じられ「国を愛するってこんなに自然で大切なことなんだ」という印象を持ちました。初海外で「目からウロコ」の体験はいくつかありましたが、最も強く印象に残ったのはこの点ですね。
ただ、少しは会話ができると自惚れて臨んだフィンランドですが、実際にはほとんど現地の人の話しについていけませんでした。当然ですよね。
話しを聞く→少し遅れて意味が理解できる→日本語で解答を考える→フィンランド語に翻訳する、というプロセスを経て、いざ、話そうとしたら既に別の話題に移っていて話しができず。
だんだん話しができなくなっていきました。英語も話せるわけではないですが、この旅行の最後の方は比較的語彙の多い英語に逃げていましたね。 - 2度目は新婚旅行でした。何かにつけ腰の重い私に対し、「まとまった休みが取れるのは今しかないから」とハッパをかける妻に「連れていってもらった」5泊程度の旅行でした。
これがなければ、いまだに2回目のフィンランドにはでかけていなかったと思います。
この時はヘルシンキ市内のごく限られたところしか行きませんでした。札幌市内で例えると、宿泊先のホテルは道庁赤レンガのあたりで、出掛けた最も遠い場所が東豊線の北13条東駅、というくらい、近場でうろうろしてました。
晩秋のヘルシンキは思いの他日射しが鮮烈(強烈、ではなく)でした。ギラギラと表面を焼き焦がす輝きではなく、無数の微粒子が降り注いで体を突き抜けていくような感じです。 - もうひとつ、印象に残ったのが、普段おっとりした感じの妻が意外に積極的だということ。
「この前教えてもらったあの言い方、なんだっけ?」
改めて教えたらすぐにそのフレーズを使って話したり、現地の人の使っている言い回しをその場で真似して使ってみたり。
少しぐらいあやふやなところや足りないところがあっても、そんなことは気にせずに笑顔でどんどん実行していく度胸と柔軟性には今でも感心させられます。
最初の旅行の時に、彼女のような度胸があったらなぁ!
滞在先のホテルは朝食のバイキングがとても美味しく、毎日、朝食の時間が楽しみでした。次に行く時もまた同じホテルに泊まろうと話しています。 - 3回目のフィンランド旅行の、具体的な予定はまだ何もありません。
次は、ラハティかクオピオのジャンプ台を見に行きたいです。
あとは、タリンに行くか、陸路で国境を越えてみたい。行くならスウェーデンよりノルウェーかなぁ。 - 【趣味】
- 最近の趣味は体力維持を兼ねて始めたマラソンです。
目標はフル4時間以内、ハーフ1時間40分以内。いずれもまだまだ遠い道のりです。
機会があれば、知人がはまっているウルトラマラソンにも挑戦したいと思っています。 - ただ一番大切に思っている趣味はバイクです。昨年はついに一度も乗りませんでしたが、もう一度、函岳山頂林道を走ってみたい。
手を伸ばせば届きそうなほどに雲が近付いてくるのに、山頂はちっとも近付いてこない不思議な感覚。
ガードレールも電柱もない山肌に沿って伸びる林道は、天に駆け上がっていくかのような気持ち良さでした。
もし、スキージャンプに、そしてフィンランド語に出会っていなければ、初めての海外旅行はスーパークロスを見にアメリカに行ったか、ヨーロッパならイタリア、スペイン、ベルギー、イギリスあたりにモトクロスやトライアルの世界選手権を見に行ったと思います。
フィンランドは、特にエンデューロというカテゴリーで数多くの名ライダーを輩出している強豪国なので、どちらにしろ行ったかも知れません。
さもなくば高校生の頃に興味のあった遊牧騎馬民族になったつもりでモンゴルの草原地帯を走りに行ったか、アウトバックで大小マゼラン銀河を見るためにオーストラリアに行っていたかなぁ・・・。 - 【現在】
- フィンランド語の講師を始めた頃に比べると、自分の生活は大きく変わりました。仕事が変わり、働き方も変わりました。講座を続けていくためには、今の仕事の方が有利かなと思って始めた仕事ですが、現実はそう簡単ではありません。仕事が忙しくなってくると、「仕事かフィンランド語、どっちかやめないと俺、死ぬかもな」と思うこともあります。ラクになった点もあれば、きつくなったところもありますが、トントンよりは少し厳しくなりましたかね。
次の授業ではこれをやろう、このテキストを読み物として使って見よう、と思っても、下調べが追いつかずに使用を断念した資料も多々あります。
自分自身の引き出しの中身を、なかなか増やせないのが悩みのタネです。 - 思えば、大学などで語学を体系的に勉強してきたわけでもなく、人に何かを教える専門教育を受けわけでもなく、人前で話をするプロフェッショナルでもない。
フィンランドにいたのなんて合計で2週間くらいしかない、そんな講師を「先生」と呼んでくれる人たちには本当に感謝していますし、その感謝を具体的な形にするべく、授業の中身を充実させようと微力を尽くす毎日です(joka paiva じゃなくて、joka toinen paivaくらいかな、最近では。) - 【フィンランド語に興味がある皆さんへ】
- 日常ほとんど触れることのない『フィンランド語』。
「英語すら怪しいのに」と受講することに二の足を踏んでいる人もいるかもしれません。
私は英語は苦手でしたよ。
基本文型(SVCとかSVOとか)も良く判らず、三人称単数現在のsや、do,does,didの使い分けとか、冠詞の使い分けとか、中学生で習うことが理解できないまま高校生になってました。
挙句、againstはagainの最上級?などと今にして思えばどうしてそんな勘違いするんだろう、というレベルの誤解もしていました。
覚えている単語の数などは、英語の方が多いかもしれないけど、今は英語よりフィンランド語の方がすんなり話せたりします。 - 全くの初心者として勉強を始めるのなら、分からないことだらけで当たり前。
間違ったら直せばいいし、知らなければ覚えれば良い。忘れちゃったらもう一度覚えれば良い。ただ、それだけの事ですよ。
もし、フィンランドやフィンランド語に興味があったら、軽い気持ちで始めてみませんか?