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フィンランド語講座

北海道フィンランド協会

mölkky モルック

市川理事からのわかりやすい説明

Mölkky「モルック」はフィンランド発祥の棒倒しゲーム、フィンランド語を教えている立場からすると「モルッキュ」のほうが原語に近いし、かわいい感じもするのでそう呼びたいのですが、みんな「モルック、モルック」と言っているし、日本モルック協会というのも存在するので、多数派には抗えず「モルック」と呼ぶことにします。

先週末、協会主催の第3回、そしておそらく今年最後の屋外でのモルック体験会が開催されました。午後からの天気の崩れが当日午前中まで心配されていたのですが、ときどきは日が差す好天で、わたしも久しぶりに畑仕事以外に外で体を動かしました。

参加者多数につき3レーンでプレイ

担当の市川理事がSTVラジオさんのインタビューを受けていたこともあり、会員外の参加者18名を含む21名が参加しました。今回勝負にはあまり執着はなかったのですが、第1回体験会の優勝者としてはあまりみっともない姿も見せれず、なんとか2位で終了しちょっと面目は施せたかな。

優勝した方はおそらく最年長の参加者だったと思います。そして一般参加者の中には、脳性マヒの患者さんたちの介護に当たっている方もいて、そのような方々への娯楽や運動としてのモルックの可能性についてイベント後意見交換するなど、モルックの奥の深さを感じました。

「モルック」は近々大いに流行すると予想しています。皆さんも参加いかがですか?

優勝者の華麗なフォーム

Gambaroin. 頑張ります。

前回この「ブログ欄」に投稿してからあっという間に1ヶ月近く経ってしまいました。3日、いや5日に1度くらいは何か投稿しようと決めていたのに情けない限りです…

週末大学院の入試を控えたNettaにエールを送ったところ、
Kiitos tsemppauksesta. Gambaroin!
と返信が来ました。

「~をありがとう」はフィンランド語ではKiitos -stA.「~についてありがとう」という発想でした。Tsemppauksestaの元の形、tsemppausは応援の時の決まり文句Tsemppiä!「がんばれ」の名詞形「がんばれ!と応援すること」です。辞書にはおそらく載っていないでしょう。

それではGambaroinは?フィンランド語はgを単独で使うことはなく、bも外来語にしか用いませんが…こちらは札幌の留学生連中が考え出した動詞gambaroida(タイプⅡ!)の一人称単数形、つまりMinä gambaroin.「(私)頑張ります。」です。内輪で、冗談のようにしか使いませんが、もちろん(minä) gambaroin, (sinä) gambaroit, hän gambaroi, (me) gambaroimme, (te) gambaroitte, he gambaroivatと人称変化できますし、Gambaroitko (sinä) ? 「(あなた)頑張ってる?」と疑問文にもできるし、Gambaroidaan!「頑張ろう!」のように勧誘表現でも使えます。

札幌の留学生にだけ通じる日フィン融合の動詞紹介でした。

 

nukkua pommiin 爆睡する

手前Netta、奥Mia

今週はこれまでのところ水曜日のサークルにMiaが、昨日木曜日の初級コースにNettaが、それぞれ新学期前の忙しい中、ゲストとして来訪してくれ嬉しかったです。特に木曜は今期に入ってからフィンランド人ゲストの来訪がなかったので、受講生の皆さんも喜んでくれたのではと思います。

水曜サークルで使用のプリントにnukkua pommiinという表現が出てきました。nukkuaは「寝る」、後半の要素pommiは「爆弾」ですから、まさに「爆睡する」ですね。Miaによれば寝過ごしてしまった時とか、よく使う言い回しだそうです。

私が大昔ロヴァニエミに留学していた時、「ぐっすり眠る」ことを表す成句のnukkua kuin tukki「丸太のように眠る」という表現を知り、「森と湖の国」フィンランドらしい表現だなと妙に感心した覚えがありますが、こちらはだいぶ古臭い表現となりつつあるようです。

nukkuaは辞書形ですからもちろん人称変化します。過去形の「私は爆睡してしまいました。」は(Minä) nukuin pommiin.です。

vihannestakiainen ゴボウ

またまた植物、野菜の話題です。伊達市大滝区で借りている畑では、今年初めて長ネギ(purjo(sipuli))とゴボウ(vihannestakiainen, vihannes「野菜」+takiainen「アザミ、ゴボウの類」)に挑戦しました。ゴボウの根を食用にしているのは、世界的に日本だけだそうですね。

素人の悲しさ。ゴボウは収穫時に楽に掘れるようにするために相当畝を高くしなければならないのに、それを知らずに他の作物と同じ高さに種を蒔いてしまいました。とはいえ10株くらい立派に葉が成長したので、食用となる根の方の成長具合はいかばかりかと一株収穫してみました。土の中の根の成長先に障害物があると一本物にならないようで、写真のような三又のゴボウが出現しました。

見た目は悪いのですが、きんぴらごぼうにしてみたところこれが大変美味。来年はもう少し研究し、株数も増やしてみようと思っています。一方長ネギはゴボウと逆で、畝に溝を掘って苗を植え、成長と共に茎に少しずつ土をかけてやると白くて柔らかい部分が多くなるそうです。長ネギは苗を植えるのが遅かったので、まだ直径1cm位といったところですが、これからの2-3週間でもう少し成長してくれればと思っています。

いつもお世話になっているKaisa Häkkinen教授の『現代フィンランド語語源辞典』によると、アザミ、ゴボウの類(学名Arctium)を表すフィンランド語takiainenはバルト・スラブ語からの借用で、祖形はdagijas、現代ラトビア語ではdadzisになります。書き言葉として初めて登場した1637年時にはtが一つ多いtakkiainenだったそうです。

mustikanpoiminta ブルーベリー(mustikka)狩り

先日伊達市大滝区へ数名のフィンランド人、及び畑を借りているメンバー数名とブルーベリー狩りに出かけました。ブルーベリーの木は、私たちと同じく大滝の藤田さんから畑を借りている協会員の酒井恵真先生のものなのですが、今年は出来がよかったので、少し取っていって構わないよ、ということになったのです。

酒井先生のログハウスOLOSのロフトで、札幌の残暑の中とは違い、しばらくぶりに涼しい部屋でぐっすり眠れた女性陣は、雨の中、嬉々としてブルーベリー採りに励んでいます。SiljaはAntero Raimo & Ovetのそのものズバリmustikanpoiminta「ブルーベリー狩り/摘み」をスマホでかけながら、Ronjaは「私なかなか採るの上手でしょ。え、あなた、それしか取れてないの?」と軽口をたたきながら、Siiriは「収穫したブルーベリーについて「獲物」という言葉を使える?」と日本語のことも考えながら、といった調子です。

ヘルシンキ郊外でもこの位はすぐに採れます(2017年夏)

フィンランドの野生のブルーベリーは低灌木ですから、地表から20-30cm位のところに実がなっています。腰をかがめなければならないので、栽培されている日本のブルーベリーのほうが取りやすいとは思いますが、短時間のうちに、皆かなりの「獲物」を手に入れ、汗を流しに温泉へと向かっていました。

数日後Siljaが作ったブルーベリーパイ(mustikkapiirakka)のおすそ分けをもらいました。「バターがなかったからココナツオイルで作ってみた」と言ってましたが、大変美味でした。今年はフィンランドでもブルーベリーが大豊作のようで、コロナ禍で夏をフィンランドで過ごせなかった私の先生のSeijaさんからも:Siskot kirjoittivat, että Suomessa on ollut tosi hyvä mustikkavuosi.「フィンランドでは本当に良いブルーベリーの年になっている、と妹たちが手紙を書いてきました」とハガキが来ました。

keisarinelämänlanka 朝顔(皇帝の[天皇の]人生の糸)

今年の8月(elokuu「収穫月」)下旬は大学のフィンランド語入門の成績付けなどに時間を取られ、火曜日から金曜日担当の協会のフィンランド語の各コースも再開、あっという間に9月(syyskuu「秋の月」)に入ってしまいました。その間この「ブログ欄」にも何も投稿できず、数少ない読者の皆さんには失礼しました。昨年は10日間ほど小笠原諸島(父島・母島)でのんびりできたことを、懐かしく思い出しています。

植物は、自然のものは気候や土壌に適応する形で精一杯生育しようとする姿が、作物や花卉は天候に左右されることも多いですが、だいたい丹精すればそれに見合った実や花をつけてくれるところが好きです。そのようなわけで植物に関する話題が多くなっています。

4月に「複合語を覚えるのは語彙を増やす秘訣の一つですよ」と書いた覚えがありますが、わが家のプランターで先月下旬から遅まきながら咲き始めたアサガオはまさにその代表的な例。keisarin(「皇帝/天皇の」)+elämän(「人生の」)+lanka(「糸」)です。面白い発想の複合語だとは思いませんか。

アサガオの丹精そのものは、水やりは欠かさなかったものの、本来あんどんに仕立てるべき品種だったのに気づかずに支柱だけ立て、無理やりそれに這わせていたようないい加減さでした。とはいえかなり大きな花を早朝には咲かせてくれています。

火曜上級サークルの5名がテキストsuomea suomeksi 2を修了されました

フィンランド歴史教科書(読解中)

夏休み前の8月11日、火曜上級サークルの5名が中・上級者向けのテキストsuomea suomeksi 2(「フィンランド語をフィンランド語で2」)を修了されました。Onneksi olkoon! 4年と数カ月を費やしてのフィンランド語主要文法の学習、お疲れ様でした。本当におめでとうございます。

修了の5名は以下の皆さんです(アイウエオ順)。
‐佐藤美樹さん(レベルが上がるにつれ積極性がどんどん出てきて大変うれしく思っています)
‐重田亜紀子さん(火曜だけでなく、復習も兼ねての金曜上級コース参加、よく頑張りました)
‐田中佑実さん(ヘルシンキ大学留学中にコロナ禍に遭遇、帰国後実家の長崎での受講、遠隔授業のメリットを良く生かしてくれました)
‐平井孝典さん(授業を離れてもさまざまなサポートや示唆、感謝しています)
‐堀岡真由美さん(カンテレ演奏同様にフィン語の学習にも力を入れていただきありがとうございます)

対面授業ではテキストss2終了後は通常、ゲストのフィンランド人も交えて修了証授与、茶話会という段取りになるのですが、今回はそれが叶わず残念です。また修了の報告と修了証の送付が遅くなったこともお詫びします。

火曜上級サークルでは文法の復習と、既習の文法を生かした長文読解などに今後取り組んでいく予定です。夏休み明けは早速フィンランドの歴史の教科書(抜粋)の読解に取り組んでいます。

tyrni サジー、シーベリー、スナジグミ(砂地グミ)…

tyrni(英語:seaberry,sea buckthornなど )

tyrniは日本ではまだあまり知られていないグミ科の植物ですが、世界的には類まれな栄養素の高さで昔から知られ、砂漠の拡大防止や土壌汚染還元が期待できるなど、食品としても植物としても今後注目を浴びそうな気がします。北海道ではむかわ町などで試験的~実用化段階で栽培されています。

実がなるにはオスの木とメスの木が必要とか

そのようなtyrniを伊達市大滝区の知人の藤田さんの畑で見かけてビックリ。前回草取りに来た時には実はなっていなかったはず。片方の木は葉が落ちている代わりに、オレンジの実がぎっしり枝になっています。もう一本の木には数年前フィンランドのボスニア湾沿いの海岸地方で見た木のように、葉と今後熟していくのだろうと予想される黄色めの実がなっていました。

フィンランドのtyrni

 

 

 

数年前旧留学生Ullaのお母さんに作ってもらったtyrniのパイ、本当に美味しかったことを思い出します。藤田さんはこのtyrni、どう活用するつもりかな?まさか鳥の餌にするにまかせるつもりじゃないですよね。

kymmenes elokuuta 8月10日(の私)

昨日は珍しく朝からちょこちょこあちこちに出かけ、夕方くたびれて帰宅しました。昨日何をしたか、入門・初級で勉強している方のために、いくつかの名詞につき格変化させずに辞書形で記します。中級以上の方は「午前」はaamupäivä、でも「午前に」はどうなるか、といった格変化を考えてみると勉強になると思います。

午前(aamupäivä)には、Siljaと畑(pelto)でミニトマト(kirsikkatomaatti、「チェリー」+「トマト」)、ナス(munakoiso)、ピーマン(paprika)などを収穫。長靴(saappaat)を普通の短靴に履き替える。帰り道、格安スーパーで買い物(ostos)した後Siljaとさよなら。その後市内中心部(keskusta)へ。午後1時半から協会常務理事でもある佐藤美津子さん門下生3ユニットによる「夏の散歩道コンサート(konsertti)」でカンテレ(kantele)、ヴァイオリン(viulu)、アイヌのトンコリなど楽器の音楽(musiikki)を楽しむ。会場では佐藤さんの他、ご主人、白井理事、旧受講生などの元気な姿を見ることができ安堵。

コンサート後は駐車場(parkkipaikka)までの道すがら、道産品販売ショップ・沖縄ショップで、またまた買い物後帰宅。

話は変わりますが、昨日の北海道新聞朝刊に、「首相のあいさつ広島と文面酷似」との小さな記事の中に「6日と9日に広島市、長崎市の両被爆地でそれぞれ開かれた平和式典での安倍晋三首相のあいさつの文面が酷似しているとして、被爆者から『何のために被爆地まで来たのか。ばかにしている』と怒りの声が上がった。」との文章がありました。おそらく自分の言葉で語ることはせず官僚の作文の棒読みで済ませたのだとは思いますが、ことばに関わる者としては戒めとなる出来事と記事でした。

今日と明日の授業でクラスの授業は夏休み(kesäloma)になります。今日の火曜上級サークルでは中・上級用のテキストsuomea suomeksi 2を修了予定です。修了の皆さん、4年強の勉強、よく頑張りました。今後もどうぞよろしくお願いします。

kesäkurpitsa ズッキーニ

2020年7月25日

8月(elokuu=「収穫月」)に入り、例年ならそろそろ夏休みという時期なのですが、コロナ禍のおかげで夏休み開始が大学も、フィンランド協会の授業も先送りになり、バタバタと忙しく時間が過ぎていきます。どのくらいの方がこのブログ欄をたまに覗いてくださっているか見当もつきませんが、2週間くらいお休みになっていました。

弟の家族、それからSiljaと、気分転換、趣味とわずかな実益を兼ねてやっている市民農園のズッキーニが豊作です。1株しかないのですが写真はすべてその1株からとれたもので、その後もたくさん収穫しています。近所からも断れずにいくつか貰ったので、今年はズッキーニ豊作の年かな?

ズッキーニkesäkurpitsaは「夏」(kesä)+「カボチャ」kurpitsaのわかりやすい発想の複合語です。Kesäは既に語彙に入っている方も多い語かと思いますが、実はフィンランド語の東西の方言差の例としてよく持ち出される語で、このkesäはもともと代表的な東方言です。一方西方言の「夏」はsuvi。Kesäはファーストネームとして用いられませんが、Suviはよくある女性の名前です。日本なら「夏子」さん、何年か前のヘルシンキ大学からの留学生にもSuviさんがいました。

フィンランドのズッキーニ

カボチャkurpitsaはいつもお世話になっているKaisa Häkkinen著『現代フィンランド語語源辞典』によれば、ラテン語のcucurbitaがスウェーデン語のkurbitsを経由してフィンランド語に入ってきた比較的古い外来語とのこと。Kurpitsaという語形の初出は1642年発行の聖書、それより前世紀のミカエル・アグリコラもカボチャに言及していますがkurbitaという形で紹介しています。

ズッキーニはフィンランドでも夏によく食べられる野菜です。