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フィンランド語講座

北海道フィンランド協会

Hyvästi lempi-T-paitani! さらば大好きなTシャツ!

暑がりで一年中室内ではTシャツでいるたちなので、フィンランド人からのお土産の中でもTシャツはありがたいものです。室内でも、また時にはフィンランドのPRも兼ねて外でも着ていればいつかは寿命が来ます。私のお気に入りのTシャツの何枚かも最後の時を迎えつつあります。

写真のアーリッカ(Aarikka)のTシャツは古い友人でカンテレ奏者のEva Alkulaからもらったお気に入り。生地が薄くなり、首回りがボロボロになり、いよいよ雑巾かウエスになる運命です。

描かれている動物はヘラジカ(hirvi)。北部のトナカイ(poro)なら自動車と衝突すればトナカイさんだけがあの世行きですが、フィンランド南部~中部に生息するヘラジカの場合は通常人間もお陀仏です。

このような大型動物のヘラジカですが、肉が本当においしいんです。トナカイはそれなりの値段を払えばスーパーでも買えますが、ヘラジカは狩猟を趣味としている知人などがいないとなかなか手に入りません。

アハタリ(Ähtäri)動物園で

最後にちょっとだけ文法を。hirviのように-i終わりの名詞・形容詞は変化が何パターンかあり難しいですよね(参考:テキストss1のs60)。hirviはnimi「名前」やniemi「岬、半島」そしてSuomi「フィンランド」と同じパターンです。したがって、
・1頭のヘラジカ (yksi) hirvi
・2頭のヘラジカ kaksi hirveä(単数分格)
・たくさんのヘラジカ monta hirveä(単数分格)、あるいはpaljon hirviä(複数分格)
・(1頭の)ヘラジカの hirven(単数属格)
・(複数の)ヘラジカたちの hirvien(複数属格)
となります。単数分格のhirveäが、「すごい、ひどい」に相当する形容詞とたまたま同形になるので注意しましょう。

 

raparperi ルバーブ

昨日の金曜上級コースには久しぶりにNettaが参加してくれ、私も嬉しかったですが、授業参加された皆さんもいろいろと参考になったことが多かったと思います。今年の春をkoronakevät「コロナ(の)春」とフィンランドでは呼んでいるようですね。そのうちPrahan kevät「プラハの春」のように歴史の教科書にも載るような語になるのでしょうか…コロナ関連の語彙を紹介してほしいという要望が受講生の一部からあったので、近いうちにいくつかの語彙や言い回しだけになると思いますが、このブログ欄で紹介することを考えています。

今週火曜日に伊達市大滝区で畑仕事をしてきました。種蒔きが主でしたが、今年はルバーブの成長が良くて楽しみです。Nettaが授業に来てくれたのも、ルバーブを賄賂として送っておいたのが効いたかもしれません(ルバーブパイを作ってみると言っていました)。

 

さっそく帰宅後ルバーブジャム(raparperihillo)を作りました。作り方は本当に簡単で、洗って2cmくらいの長さに切ったルバーブ、お好みの量の砂糖とレモン汁を鍋に入れて10-12分ほど煮るだけ、水も入れる必要がありません。私のようなものぐさでも簡単にでき、まず失敗することもありません。茎が緑だと緑色のジャムが、今回のように赤みを帯びた茎が多いとピンク色になりますが、味は特に変わらないと思います。ピンク色っぽいジャムの方が見栄えが良いので好む人が多いようではありますが。

話は変わりますがraparperi、巻き舌が苦手な人には攻略が難しい語の一つかもしれません。

syreeni/sireeni ライラック

5月31日(kolmaskymmenesensimmäinen toukokuuta、あるいはtoukokuun kolmaskymmenesensimmäinen)。明日から6月(kesäkuu「夏の月」)ですね。今日は恩師のSeijaさんの誕生日でもあります。Paljon onnea!「おめでとう!」

「小・中学校は6月1日から(8月上旬まで)夏休みだったので、終業式と重なることの多い誕生日が楽しみでした。」とセイヤさんはよく言っていました。

5月の花というと札幌市の市花(kaupnginkukka)でもあるライラックが個人的には浮かびます。5月下旬のさっぽろライラックまつりも中止になってしまいましたが、札幌では庭木として植えられていることも多く、家の周りを散歩していると満開の花をよく見かけます。しかし花期もそろそろ終わりですね。

ライラックはフィンランド語ではsyreeniあるいはsireeniどちらでもOKですが、後者には「サイレン」の意味もあります。このように稀にですが、どちらの綴りでもOKという語がたまにあります。フィンランド語のtoissapäivänäが日本語では主に「おとつい」派と「おととい」派に分かれ、でもどちらでもOK、というのに少し似ているかもしれません。

他にはフィンランド人の好物「リコリス」もlakritsiとlakritsaのどちらもOKです(スラングはlaku)。

注意するのはruoka「食べ物、食事」の格変化した場合です。この語は私が授業でいつも言っている最も難しいkpt変化、すなわちk:Φ[消える]の変化を持つ語です。したがって単数属格「食べ物の、食事の」はruoanとなります。このuoaという母音の3連続はkが消えることによって生じたわけですが、フィンランド語は基本的にできるだけ母音の3連続を避けたい言語なので、当該部分は多くのフィンランド人が[u:a](カタカナ書きだと「ウーア」)と発音しています。最初のうちは「ルーアン」という音を聞いて、あるいはruoanという綴りを見て、辞書形のruokaが思い浮かばないので苦労します。

フィンランド語は綴りと発音がほぼ一致しているのが「売り」なので、「ルーアン」という発音に合わせて、ruuanと表記することも許されてます。こちらの方は綴りを見た時にruokaとはより気づきにくくなっています。

最後に。出だしの『「31日」の序数、長すぎ!』と思われた方、発想を柔軟に!toukokuun viimeinen päivä「5月の最後の日」と言えば楽でしょ。

salaperäinen partitiivi ミステリアスな「分格」

何の飾り気もない表紙ですが、私にとっては「宝の山」です

「分格」はフィンランド語学習者以外には何のことかわからず、一方、多くの学習者には不可思議で理解が難しい文法格、おそらく外国人学習者にとっては五本の指に入る難しい文法事項でしょう。

たとえばテキストss1の16課、s101(s=sivu「ページ」)の一番下にある文:
Kysyn tä asiaa Liisalta ja sanon sen Pekalle.「私はこのことリーサに尋ね、そしてそれペッカへ言う」
という文の前半の「~を」は単数分格になっていますが、後半の「~を」は単数対格(あるいは文法書によっては単数属格、いずれにせよ-nがサイン)になっています。なぜでしょう?私自身も感覚的にはこの使い分けはだいたい理解できていますが、学習者の方に完全に納得してもらえるようなうまい説明の仕方は思いつきません(特に前半で「なぜ分格を使うのか」について)。

このような分格の謎を解決すべく、寝しなに毎日数ページPartitiivin valinta「分格の選択」という本を読んでいます。著者はMatti Larjavaaraヘルシンキ大学名誉教授。昨年出版されたばかりの本で、ぴったり500ページ。「寝しなに」と書きましたが、正確には、1-2ページ進むと眠くなり、この重たい本が右手からボトンと落ちたら、しおりを挟んでそのまま寝てしまいます。

まだ400ページにやっと到達したところですが、あと4-5回は読み返さなければポイントさえも押さえることができないと思っています。例文は簡単なのですが、解説は少なくとも私にとっては超難解です。(本当は面倒くさいからなのですが)1回目は辞書なしで読み切ってみよう、と考えて枕元に置いたのでなおさらです。

でも「分格の歴史」から始まって、「主語」、「目的語」、「補語」のそれぞれにおいてどのような場面で分格が使われるのか、論理的に説明されていることはよく分かります。この本の内容がしっかり理解できたら、私も「分格の大家」になれそうな気がしますが、何年かかるかは皆目見当がつきません。

etätyö ja etäopetus テレワークと遠隔教育

先週はZoomを使い、火曜から金曜は担当コースの受送信テストとZoomに慣れてもらおうというイベント、加えて木曜に北海道大学の春学期最初の授業がありなかなか大変な1週間でした。火・水にはSiljaが、木曜の北大の授業にはJussiがゲスト参加してくれて大変助かりました。

etätyö「テレワーク」(参考:この語でGoogleに引っかかった件数480万件以上)、etäopetus「遠隔教育」(同350万件以上)などの語頭のetä-はetäisyys(名詞で「遠さ、遠距離」)、etäinen(形容詞で「遠い、遠距離の」)に見られるように、「遠いこと」を表す部分(英語ならtele-でしょうか)、työは「仕事」、opetusは「教育、指導」です。

これから私が担当のコースで本格的に実施しようとしているWeb会議ツールを使った遠隔授業、どうフィンランド語で表現したらよいのでしょうか?「授業」を表すtuntiを後ろにつけたetätuntiという語は通じると思いますが、まだ一般化していないようです(同約6500件)。

Jussi君の意見ですが、verkkotunti「ネット授業」(同約3万件)はどうかということでした。もともと「網」を表すverkkoを前につけた語として、verkko-opetus「Eラーニング(が近いようです)」(同約56万件) 、verkkokurssi「ネット講座(特に自分のスケジュールに合わせて学習できるオンデマンドの授業)」(同約55万件)、verkkoluento「ネット講義」(同約15万件)などがあります。

一方大学での、決まった時間に行うオンライン授業などはetäluento「遠隔講義」(同約2万件)も使えるかな、とのコメントでした。

äitienpäivä (viisitoista vuotta sitten) 母の日(15年前の)

今日は母の日、フィンランド語ではäitienpäivä、äitienはäiti「母」の複数属格(テキストss1の最終27課で履修)、つまり正確には「お母さんたちの日」ということになります。フィンランド、日本を含め世界的には5月の第2日曜日が母の日という国が多いようですね。

古い写真を眺めていたら、15年前の母の日(2005年5月8日)に最も古い友人のJussi Salmela宅にお邪魔していたことに気づきました。何枚かの写真とともにSalmela一家の多忙な「母の日」をレポートします。

日曜日午後1時40分。JussiとSirkka(写真右端)は100mほど隣に住んでいるJussiの両親Antti(残念ながら亡くなってしまいました)と今日の主役でもあるMaija(着飾っています!)を昼食に招待、サラダやオーブン料理などが見えます。Sirkkaは娘のRonjaにもご飯を食べさせなくてはならず大忙しです。私も昼食をご相伴させていただいています。

同日午後3時。今度はMaijaが息子のJussi(MaijaとAnttiの間)の家族、娘(Jussiのお姉さん)のLeaの家族を招待し、母の日のお祝い第1弾スタートです。別なオーブン料理やケーキ、右奥には木の葉型のカレリアパイ(karjalanpiirakka)などが見えます。私も手前の空いている席でご相伴させていただいており、コーヒー右の皿にはこれから食べようするカレリアパイが1つ載っています。その背後の小鉢に入っているのは、カレリアパイのトッピング、卵バター(munavoi)でしょう。小さな子どもたちは腹ごなしに外で遊んでいます。

 

 

同日午後6時、Salmela一家と私は車で30分ほど離れたSirkkaの両親(写真両端、花の隣に座るSirkkaのお母さんはやはり着飾っています)宅で、母の日のお祝い第2弾を迎えています。またまたケーキとカレリアパイ、お菓子類。私は甘いものはそんなに量を食べられないので、ほんのちょっとご相伴といった形ですが、Salmela家のみんなは胃袋をリセットしたかのようにケーキをほおばり、私にもお代わりを勧めます。その後午後8時半から9時頃に帰宅後、皆で夕食を食べたはずです。お腹には大変な、しかしとても楽しい掛け持ちの午後でした。

 

「父の日」isänpäiväは日本を含む多くの国が6月の第3日曜日、一方デンマークを除く北欧諸国とエストニアは11月の第2日曜日、すなわち「母の日」から半年後に祝います。isänはisä「父」の単数属格(ss1の5課で履修)、つまり「(一人の)お父さんの」で、なぜ「お父さんたち(の日)」と複数で表現しないのかが不思議です。

voitonlaukka ギョウジャニンニク(アイヌネギ)

今日は、来週から始まるZoomを使った担当コースのテスト送受信・補習のスケジュール作りや連絡でずっとPCの前にいるので、このブログ欄は小ネタで済ませることにします。ご勘弁を。

ウポポイ(白老町のアイヌ文化復興拠点)の開業が再延長されると新聞紙面に出ていました。個人的にアイヌ刺繍家の方(残念ながら亡くなってしまいましたが)と交流があったり、元アイヌ民族博物館館長の中村齋(いつき)先生がフィンランド協会の重要なメンバーだったりしたので、開業を心待ちにしていたのですが残念です。気持ちもリセットして開業を待つことにします。

北海道ではおなじみの山菜ギョウジャニンニク(学名Allium victorialis)、通称アイヌネギをフィンランド語で何と言うかシリヤに教えてもらいました。voitonlaukkaだそうです。知りませんでした。laukkaは古いゲルマン語系言語からの借用でネギ属の植物のこと(英語ならleek)、voitonはvoitto「勝利」の属格、つまり「勝利の」、「勝利のネギ」というわけです。英語ではギョウジャニンニクはvictory onion(他にAlpine leekなど)と言うそうなので合点がいきました。

畑を貸してもらっている伊達市大滝区で山に入らなくてもアイヌネギが採れる場所を教えてもらったので、コロナ禍がなければ採りに行きたいところなのですが・・・そろそろいいサイズになっているかなあ。

Kevät 2020 – viesti Marjolta 「2020年春 – Marjoからのメッセージ」

2004年8月7日


古い知人のマルヨ・ビステル=マヤラ(Marjo Bister-Majala)から、Kevät 2020「2020年春」というタイトルのメールが来ました。マルヨとご主人のテロ(Tero Majala)は中央フィンランド、ユヴァスキュラ(Jyväskylä)在住で、ともにユヴァスキュラシンフォニーのバイオリニストです。彼らに初めて出会ったのは2000年代に入ってすぐ、フィンランド協会主催の道内での同シンフォニーの演奏会があった時です。その後ユヴァスキュラのお宅に何度か訪問させてもらい、私の親友がいるピルカンマー(Pirkanmaa)地方のルオヴェシ町(Ruovesi)に彼らが別荘を持っていることもあり、2004年にはそちらにも招待してもらいました。初めて会ったときにはたしか小学生だった息子のTuomo君、娘のAinoちゃんもすっかり成長し、Ainoは最近結婚したとか。愛犬のAnskuも残念ながら亡くなってしまいましたが、とても可愛いかったなぁ。いつまでも印象に残る、フィンランドに行けたらぜひまた再会したい人たちのリスト上位に位置する一家です。
 

2018年クリスマス(Marjoより)


メッセージには無人称の構文(主語のない①三人称単数を使った構文(5行目)と②受動態の文(2, 4行目))が多く使われています。前者は木曜初級コースの皆さんも少しずつ親しみつつある構文、②はテキストss2の4課以降学習する文法事項でした。今日はあまりそれ以上の文法については詳述しませんので、ご自分のレベルに合わせて読んでみてください。
 
 
 
Hei, Aki!
Tällaista aikaa eletään.
Meillä oli viimeinen konsertti 11.3. ja sen jälkeen Suomen hallitus kielsi yli 10 henkilön kokoontumisen ja siis koko loppukevään konsertit peruttiin.
Kotona pitää olla, kaupassa saa käydä, jos on terve.
Oletko sinä ollut terveenä?
Ja sinun perhe?

Halaukset täältä! 

やあ、Aki!
このような時(代)を(私たちは)生きています。
私たちは最後のコンサートが3月11日にあって、その後はフィンランド政府が10名以上が集まることを禁じたので、つまり晩春のすべてのコンサートがキャンセルされてしまいました。
家にいなければなりません、店には行ってくることができます、もし健康なら。
あなたは元気な状態ですか?
そしてあなたの家族は?
こちらからハグ(を送ります)。

tilli ディル

 

ディル(tilli)は本当にフィンランドでよく使われるハーブです。日本では存在はそこそこ知られていても、どのように使ったらよいかわからない人も多いようですが、フィンランドでは魚、特に鮭(lohi)との相性抜群ということで、サーモンスープ(lohikeitto)を筆頭に多くの料理で使われます。料理の腕ははなはだ怪しい私でも、ディルが入ったサーモンスープ、ボルシチ、ポテサラはだいたい周囲から及第点をもらえます。生のディルは大きなスーパーにしかなく、しかも小袋に二房?入りで150円位するのが難ですが、いつもお世話になっている伊達市大滝区の藤田さんの畑では毎年ハウスで栽培しているので、夏以降はたくさん香りのよいものが手に入るのでうれしいです。今年も豊作だと良いのですが。写真はsuvipiha「夏庭」ブランドのディルの種袋、サーモンが写っているのがフィンランドらしいでしょ。

最後に少しは勉強も。以下は母音や子音の長さの違いで意味が大きく変わってくる例として良く提示されます。発音して確認してみてください!

・tilli「ディル」
・tili「(銀行)口座」
・tiili「レンガ」

patavahti ポットウオッチャー

使用中のpatavahti

前回提示した品物、何だかわかりましたか?フィンランド語ではpatavahti、pataは「鍋」、vahtiは「見張り、番兵」で、日本語ではポットウオッチャーと言っているようです。鍋と蓋の間に隙間を作る吹きこぼれ防止道具です。日本では全くポピュラーな道具ではないですが、電気での調理器具が主流のフィンランドに比べ、日本ではより強い火力が得られるガス調理が主流なので、今後存在が知られてくれば普及することもあるかもしれませんね。

日本では特に冬の風物詩でもある各種「鍋料理」は、ruoka「料理、食べ物」を後ろにつけてpataruokaと説明しています。フィンランドの家庭では全員分の料理をオーブンや大鍋でドーンと作ってしまい、食卓で各自が食べたい分量を取り分けてしまうスタイルが多いので、日本のようにカセットコンロで鍋を温め続けながら「皆で鍋をつつく」ということはほぼ皆無です。

料理に関係して、「フィンランドではなぜレシピで小麦粉のような粉物もデシリットル(体積)で表記するのか(4月11日付け当ブログ欄)」という疑問にも答えておきましょう。一言で言えば「器さえあれば、液体も個体もどちらも量れる」ということです。重さを量るには、現在なら電池を使ったデジタルのはかり、あるいはばねばかり、あるいはもっと原始的な天秤ばかりなど、それなりの道具が必要となります。今でこそフィンランドは他の北欧諸国と肩を並べ、多分野で世界のお手本となるような先進国ですが、伝統的には貧しい農業国で、それは敗戦国として戦後も長く続きましたから、料理用のはかりはぜいたく品だったのでしょう。