mustasukkainen 「黒い靴下の人」→「やきもち焼きの(人)」 | フィンランド語講座
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mustasukkainen 「黒い靴下の人」→「やきもち焼きの(人)」

私がフィンランド語を習い始めた頃のテキストHuomenta Suomi(「おはようフィンランド」)にはmustasukkainenという長い語が早い時期に登場し、「mustaは『黒(い)』、sukkaは『靴下』で、mustasukkainenは『黒い靴下の人』ということですが、これは『やきもち焼きの(人)という意味です。』と恩師のセイヤ先生から教わりました。なぜ「黒い靴下の人」が「やきもち焼き」なのでしょう。上記のテキストは現在私が非常勤を務める北大の授業でも使っているので、よく同様の質問を受けます。日本語の「やきもち」と黒いイメージでは共通していますが・・・

今は絶版になってしまった懐かしい教科書です

諸説あるようですが、一例としてKotimaisten kielten tutkimuskeskus日本語でいえば「国立国語研究所」に相当する組織のMatti Vilppulaさんが2004年の秋に、フィンランドで最も読まれている新聞「ヘルシンギン・サノマット」紙に掲載した関連記事の要約を紹介することにします。

①「黒い靴下をはく」という表現がやきもちを焼いている状態をあらわすことは、たとえば1600年代のスウェーデンの詩人が既に使用している。またノルウェー語ではsvarthososjuke「黒い靴下の病気」という。

②色と感情が密接に結びついていることはよく知られている。フィンランドを含む北欧では黒がいらだちや悲しみ、敵意、気分の暗さといったものに結びついたのだろう。参考までに多くの言語では黄色がいらだちや苦しみをあらわしている。英語ではやきもちを焼く状態をwear yellow stockingsと言うことがある。

③一方「なぜ靴下なのか」という疑問に明確に答えてくれる定説はない。一つ考えられる説は、「黒い靴下」と、演者の衣装の色彩が感情表現に密接にかかわるパントマイムとの関連である。

④「やきもちを焼く」という感情は、見捨てられたり期待を裏切られたりすることへの恐れや不安である。そこでもう一つの有力な説がある。フィンランドでは伝統的に閏日(2月29日)には女性から男性に対してプロポーズすることが許されていた。ここで求婚を断る場合には、その見返りに男性から女性に対してスカート用の布地を送ることになっていた(他には靴など)。このような習慣からsaada rukkaset(「二股手袋をもらう」→「拒絶する」)、viitata kintaalla(「二股手袋で暗示する」→「無視する」)といったイディオムも生まれている。黒い靴下も上述の習慣に関係ある、拒絶をあらわす衣服の一点と考えられなくもない。

昔札幌に住んでいたRitvaさんは「地方によってはmustasukkainenの代わりにmustankipeä(「黒の痛み」)も使いますよ。」と言っていました。なお、このmustasukkainenという語、多くの方が使用した/使用中のテキストss1では22課の本文2、Jussi oli tullut mustasukkaiseksi, …「ユッシはやきもちを焼いてしまいました」が初出だと思います。oli tullutは過去完了、tullaは「来る」ではなく、tulla+-ksi(変格)のコンビネーションで「~になる」でした。