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フィンランド語講座

北海道フィンランド協会

Nato ja nattō 北大西洋条約機構と納豆

フィンランドとスウェーデンがNATO(北大西洋条約機構、英:North Atlantic Treaty Organization)加盟に意欲を示しているとの報道がニュースや新聞紙面を賑わせている最近です。

Natoはフィンランド語での正式名称は2語、Pohjois-Atlantin puolustusliittoで表されます。Pohjoisはpohjoinen(「北、北の」)のこと、AtlantinはAtlantti(「大西洋」)の属格(「大西洋」、tt:tのkpt変化あり)、一方後ろの語はpuolustus(「防衛、防御、守備」)とliitto(「同盟、連合」)の複合語、フィンランド語では機構名に「防衛、防御」という言葉がしっかり入っています。

フィンランド人も通常はNatoを使いますが、これは頭文字を取った固有名詞なので、t:dのkpt変化は起こさず、「Nato」(属格)はNatonのようにそのまま元の形を保持したまま格変化します。

写真はラップランド、イナリ郡のNellimという小さな集落近くのフィンランド・ロシア国境地域(rajavyöhyke)  で撮影したもの。大きな看板には「国境地域 許可なく立ち入り禁止」の文字が上から、フィンランド語、スコルトサーミ語、スウェーデン語、ノルウェー語、英語、ロシア語で書かれています。また、多くの樹木には「国境地域」の黄色いテープも巻き付けられています。

こちらの方が平和、かつ健康的で好きです

話題変わって、フィンランド人の多くが苦にしない(むしろヴィーガンの留学生などは毎日のように食べている人もいるよう)「納豆」は、表記と発音が基本的に一致するという原則から見ると、nattooが一番自然のように思われますが、nattōのように表記していることが多いようです。ō自体はフィンランド語のアルファベットにはない文字なので、nattoと表記している場合もあります。「発酵させた大豆から作られた伝統的な日本の食品(hapatetuista soijapavuista valmistettu perinteinen japanilainen ruoka)」などと説明的に言わなくとも、日本にいるフィンランド人、日本に興味を持っているフィンランド人はそのままnattōを使って大丈夫です。

それでは「納豆」の言いたいときは、tt:tの最も代表的なkpt変化は起こるでしょうか?結論からいうとkpt変化は起こさずにnattōn、あるいはnattonが普通のようです。kk:k、pp:p、tt:tの最も代表的な3種のkpt変化は外来語でも発生することがあるのですが、もし「納豆の」をkpt変化を起こして発音すると「Natoの」とほぼ同じ発音になってしまうからかもしれません。

新年度の語学講座始まりました!

4月7日から今年度の語学講座がスタートしています。

簡単に紹介しますと:
月曜入門コース(初心者対象、担当:水本)
火曜初級コース(おおむね学習歴1年の方対象、担当:水本)
水曜上級サークル(一通りのフィンランド語文法を身につけられた方対象、担当:水本)
木曜上級コース(おおむね学習歴3年の方対象、担当:水本)
金曜上級サークル(水曜に同じ、担当:水本)
土曜中級サークル(おおむね学習歴2年の方対象、担当:片瀬)

授業時間はすべて19時半~21時です。月曜から土曜まで毎日フィンランド語を勉強する機会が提供されています。「サークル」は担当講師が主宰し、当協会会員を対象とするコースとなっています。

11日に初めてハイブリッド授業を行いました。フィンランド協会事務局で最大6名程度の定員を設けた対面授業を行い、同時にZoomで配信するという方式です。写真は記念すべき初のハイブリッド授業前のクラスの様子です。授業中視線をどこへ向けたらよいのか(対面の授業者へ?それともパソコンのカメラ?おそらくその使い分けが必要かな)、通信環境によっては私の発話の出だしが聞き取りにくい、私の方もZoom参加者からの個別の質問が聞き取りにくいことがあった、等々小さな問題はありましたが、受講生とも協力して少しずつ改善したいと思っています。発音チェックなどは対面授業参加の方の発音を聞きながら、スピーカーマイクから少し遅れて聞こえてくる発音の両方にも耳を傾けなければならないので、正直初回授業は通常の2倍疲れた印象です。

ハイブリッド授業は現在月曜入門コースのみの実施ですが、今後は「コロナ後」を見据えて他のコースでも試行してみようと考えています。

受講生の皆さん、今年度もよろしくお願いします。また、入門コースは引き続き新規の受講生を受け付けていますので、奮ってご参加、お問い合わせ下さい。途中受講でもYouTubeの授業録画を使って追いつくことはそう難しくありませんので。

 語学講座担当 水本 秀明

 

2022年度フィンランド語講座入門コース詳細はこちら→2022年度フィンランド語講座入門コース受講生募集中

Kiova キエフ→キーウ

ウクライナの首都の表記を日本ではロシア語の発音を基にした「キエフ」からウクライナ語により近い「キーウ」に変更したことに対し、ゼレンスキー大統領からの謝意があったとニュースで報じられていました。

日本語は外来語を取り入れる際に、「どう聞こえたか」、それをできるだけ近いカタカナで表記しようとするので、和製英語に代表される「和製外来語」は外国人の日本語学習者泣かせの代物だと聞きました。

フィンランド語へも続々と英語やスウェーデン語から外来語が流入してきますが、借用の仕方は日本語とは全く違い、「フィンランド語の音のシステムにできるだけ合致するように」借用します。この「システム」は少しフィンランド語を学習すればわかってきますが、たとえば「語頭、語末に子音が二つ続かない(特に語末)」といったルールです。

今戦争状態にある2国、及び旧ソ連に属していたバルト三国の国名と首都名の代表的な日本語表記、フィンランド語を比べてみましょう。
-ウクライナ(Ukraina、「~で、に」-ssa)、首都キーウ(キエフ)(Kiova、「~で、に」-ssa)
-ロシア(Venäjä、同上-llä)、首都モスクワ(Moskova、同上-ssa)
-エストニア(Viro[年配のフィンランド人はEestiも使う]、同上Virossa/Eestissä)、首都タリン(Tallinna、同上-ssa)
-ラトビア(Latvia、同上-ssa)、首都リガ(Riika、同上Riiassa)
-リトアニア(Liettua、同上-ssa)、首都ビルニュス(Vilna、同上-ssa)

国名が「~で、に」に格変化する際は英語のin~に相当する内格(-ssa/-ssä)に変化するのが普通ですが、主要な国ではロシアだけは英語のon~に相当する所格[接格、面格ともいう](-lla/-llä)に変化すること、ラトビアの首都リガ(Riika)はk:Φ[消える]の最も難しいkpt変化を起こすので、「リガに」という時にはRiiassaとなるあたりが注意です。エストニアの首都タリン(Tallinna)のTalは「デンマーク(人)の」を表し、linnaはエストニア語では「町、街」(フィランド語ではlinnaは「城」!)というのは知っていても良い豆知識です。

Riikaのアールヌーボー建築(建築好きにはたまらない街だとか)

同じくRiikaの裏路地(2004年)

maastohiihto クロスカントリースキー

先週伊達市大滝区で15年ぶりくらいにクロカンスキーを楽しみました。昔は毎年セイヤ先生を連れて、2月のおおたき国際スキーマラソン大会の歩くスキーの部に参加したものですが・・・

今年は大滝も2月以降大雪の日が多かったせいか、コースにはまだ1mくらい雪があり、藤田さんと一緒に3.5kmですが、おしゃべりしたり、写真を撮ったり、クロカンスキーのテクニックを教えてもらったりして、楽しい小一時間を過ごしました。私はスケーティング走法ができないので、コースに切った溝に沿って進むクラシカル走法で何とか出発点まで帰ってきました。

クロスカントリースキーはmaastohiihto(たまにmurtomaahiihto、通常は単にhiihto)、クロスカントリースキーをするという動詞はhiihtää(学習者用に:タイプⅠ、ht:hd[t:d]のkpt変化あり)です。スロープを降るゲレンデスキーはlaskettelu、動詞はlasketella(タイプⅢ、tt:tのkpt変化あり)です。

楽しかったですが、kaaduin kaksi kertaa.2回転びました。ご愛敬です。

雪を纏った「プチ・ナイヤガラの滝」

papu (インゲン)豆

春休みを利用して、友人でフィンランド協会の理事でもある伊達市大滝区の藤田さんのところへ手伝いに来ました。今日は貝豆(インゲンマメの一種)の選別、袋詰めの手伝いをしました。貝豆は一つ一つ微妙に形や模様が違うので、それを眺めながら選別しているうちに、退屈せずにあっという間に3時間ほどが経ちました。

GW明けに植える予定のジャガイモ(peruna)の種芋の選別と、畑の雪室に埋まっている白菜(kiinankaali(kiinan「中国の」+kaali「キャベツ」))の掘り出しは明日。

インゲンマメはpapu、p:vのkpt変化があるので、「インゲンマメ」(単数属格)はpavun単数分格はpapua複数分格はpapujaです。ちなみに大豆はsoijapapu(soijaは英語だとsoy)です。

saunan päivä サウナの日

11年目の3.11を含む1週間が終わろうとしています。昨日12日の2つの補習授業で、私の今年度のクラス授業は終了、春休みに入りましたが、個人授業はいくつかあり、また、新年度の授業の準備もしなければならないので、ずっとのんびりしているわけにもいかなそうです。

kotaの魅力についてはまた後日

いつの間にか3月7日が「サウナの日」になっていたようです。知りませんでした。そうとは知らず、偶然7日は古い知り合いでフィンランド協会の理事もやっていただいている伊達市大滝区の藤田隆明さんの手作りサウナに入っていました。もともとサウナ小屋をフィンランドからキットで輸入して建てる予定だったのが、輸入業者の積載コンテナが満載にならなかったかとかいう理由でキャンセル、一念発起してストーブも含め自作した自慢のサウナです。私もコンクリートの基礎打ちや薪作りで多少貢献しているので、思い入れもあるし、藤田さんも大滝来訪時にはいつもサウナを準備して歓迎してくれます。

7日は久しぶりの昼サウナ。サウナに続くピザ小屋から外に出ると、2月下旬の大雪で埋まった庭の中、kota(小屋、特に北欧の少数民族サーミの円錐形の移動式住居などを指すことが多い)に通じる除雪された通路が、ちょうど目隠しになり、裸でイスに座って春の日差しを浴びたり、雪の上に体を押し付けて「人型」を作ったりして、サウナ+αを堪能しました。藤田さん、Kiitos!

 

persikka 桃

-(i)kkAというのはIso suomen kielioppi『フィンランド語大文法』によればいくつかの意味合いを持ち、主に名詞を作る派生接尾辞ということになっていますが、学習者にとっては果物やベリーを示す語のいくつかが-(i)kkAで終わっていることを意識する程度で良いでしょう。たとえば、

persikka「桃」
mansikka「イチゴ」
mustikka「ビルベリー、ブルーベリー」
puolukka「コケモモ」
などです。

これらは、単数変化はkk:kのkpt変化が発生する場合があることに注意すれば比較的簡単で、単数分格はそれぞれ、persikkaa, mansikkaa, mustikkaa, puolukkaaと辞書形に-aをつけるだけ、単数属格「~の」はpersikan, mansikan, mustikan, puolukanです。

一方複数変化はなかなか難しく、たとえばpaljon「たくさんの」がついた後の複数分格形は「桃」だとpersikoitaとpersikkojaと2つの形が許されています。前者の方がややポピュラーな形だと思いますが、多くの文法書では「kpt変化が関係ある名詞・形容詞は、複数分格と複数属格は強階程(=並びの左側、ここではkk)になる」と言い切っているものが多いので、kが一つしかないというのは例外になります。複数属格はもっと煩雑で、persikoitaから導ける形が①persikoidenと②persikoitten、persikkojaから導ける形が③persikkojen、そして現代フィンランド語ではほとんど使いませんが、-a/ä終わりの名詞・形容詞は辞書形に-inをつけた「第二属格」も存在するので、➃persikkainという形もあり得ます。

フィンランド語を習い始めてまだ日の浅かった頃、セイヤ先生からOma maa mansikka, muu maa mustikka.という響きの良い言い回しを教わりました。文字通りは「自分の国はイチゴ、他の国はブルーベリー」、自国(のもの)は他国(のもの)より良いものだ、という意味ですが、フィンランド人にとってはイチゴはひたすら甘く、ブルーベリー(正確にはビルベリーの方が良いのかもしれませんが)は甘さよりも酸っぱさが先に立つ、ということでしょう。たまに日本のケーキにちょこんと乗っている、粒だけ大きいが甘いだけのブルーベリーの味に慣れている者には、ちょっと分かりにくい感覚かもしれません。

Venäjä ロシア

ロシアのウクライナ侵攻が大ニュースとなっている今週です。ロシアというのは本当に興味深い国だと思います。大昔のフィンランド留学時代にも同級生にはロシア人がいて、また、一時期スラブ系言語への興味から3-4年札幌でロシア人の先生にロシア語を習ったことがあるので、ロシア人との交流は一般の方よりは多いかと思いますが、魅力的な人物が多かったです。

それが国家となったときに、今回のような侵攻を行う、日本とはいつまでたっても平和条約締結に至らない、手ごわい交渉相手ですね。

昔は(特に)飛行機嫌いで、時間もたっぷりあったので、留学時には札幌から船と鉄道だけを使ってフィンランドまで行きました。小樽から新潟までフェリー、新潟からウラジオストクまではロシア船籍の船、ウラジオストクからモスクワ、モスクワからヘルシンキまでは鉄道です。その後もう一度シベリア鉄道を使ってウラジオストクからモスクワ、ヘルシンキと旅行しました。ぜひ生きているうちにもう一度鉄道でロシアを横断して、再度その広さを実感したいものですが、実現するかどうか・・・

初級者はRuotsiと聞くとロシアだと勘違いする人が多いですが、Ruotsiはスウェーデンでしたね。いつもお世話になっているKaisa Häkkinen教授の「現代フィンランド語語源辞典(Nykysuomen etymologinen sanakirja)」によると、ロシア(Venäjä)は古いゲルマン語系からの借用、祖形は*weneđ-でもともとはスラブ系の民族を漠然と指す語、のちに(ゲルマン系民族の大移動後の)ゲルマン人の居住地やその近郊に住むスラブ系民族ヴェンド人(ドイツ語:Wenden、フィンランド語:vendi)などを指す言葉となったようです。

写真は2回目のシベリア鉄道の旅の前のウラジオストク港(2006年7月30日)で見た光景、子どもも含めて多くの市民が見物に出かけていたので海軍の大きなイベントだと思いますが、どのような背景があってこのような大規模なイベントが行われていたのかは分かりませんでした。

ロシア語はいくつかのあいさつを除き、すっかり忘れてしまいました・・・

 

 

punatukkainen 赤髪の

先週の火曜入門コースの授業では、12課の本文にLiisalla on punainen tukka ja siniset silmät.「リーサは赤い髪と青い目を持っている。」、Sinä haluat tietää, kuka se punatukkainen tyttö oli, jonka kanssa minä olin eilen Kellariravintolassa.「私と一緒に昨日Kellariレストランにいた赤髪の女の子が誰だったか、君は知りたいんだね。」 という文が出てきます。

ここでの「赤い髪」は雄鶏の鶏冠(とさか)のような赤い色ではなく、個人の受け取り方の差はありますが、少しオレンジっぽい色を指すと思われます。1枚目の写真は私の友人Jussiの奥さんSirkkaさんがクリスマスのハムと格闘している写真ですが、彼女のような髪の色ならpunatukkainenと言って差し支えないと思います(授業時にゲストのEmiliaさんにも確認、同意してもらいました)。

私はずっとこの髪の毛の色がSirkkaさんのオリジナルの髪色だと思っていたのですが、5年前に会った時に金髪だったので、染めていたのかとそのとき分かりました。日本人はブロンドの髪の毛に憧れて染めたり、脱色したりする人がいますが、フィンランド人的には周囲と同じ金髪は少々個性がないと感じられるのか、赤い髪や青い髪、日本人のように真っ黒に染めている人もたまに見かけます。考えてみればSirkkaは元美容師なので、髪の色を変えるのはお手のもの、手軽に自分の個性を出したり、気分転換する良い手段なのかもしれません。もちろん栗色~オレンジっぽい髪の毛がオリジナルな髪色の人もそれなりにいるとは思いますが。

 

Hyvää ystävänpäivää! 良い友達の日を!

2月14日、多くの方がご存知かと思いますが、フィンランドでは「友達の日(ystävänpäivä)」となっています。表題のように「良い友達の日を!」とメッセージを送ったり、年配の人はカードを送ったりします。

私の先生の川上Seijaさんは、私の自宅から車で5分もかからないところに住んでいますが、毎年律儀にカードを送ってくれます。手書きのカードや手紙は、いつもらっても嬉しいものです。今日到着したばかりの今年のカードを一緒に見てみましょう。セイヤ先生はいつもすべて大文字で書いてきます(こういうフィンランド人は多いです)。青いペンで文字を書く人も多いですが、セイヤさんは黒いペンをいつも使っています。

一応文字起こししますと:
Ystävänpäivä (14.2) sinua tervehtien (minä) toivotan sinulle iloa ja energiaa päivääsi!
Kevättä odottavin terveisin(,) Seija
となります。フィンランド語学習者であれば、(必要に応じて辞書も使って)だいたい何が書かれているかお分かりかと思いますが、結構テキストsuomea suomeksi 2レベルの難しい文法、それから間違いやすい部分が含まれています。青字がsuomea suomeksi 1レベルの文法、赤字がss2レベルの文法です。

「友達の日(2月14日) あなたに(を) 挨拶を送りながら (私は) 望みます あなた 喜び(を)と エネルギー あなたの一日へ! 春 待っている ご挨拶を セイヤ」

ss2レベルの部分だけ解説します。
①tervehtienは動詞tervehtiä「~に挨拶する」の第2不定詞(=E不定詞)具格、付帯状況を表す「~しながら」の用法(18課)。
②päivääsiの-siは「あなたの」を表す所有接尾辞、注意するのはpäivää(単数分格)の後ろに所有接尾辞が付いているのではなく、päivään(単数入格「一日へ」)の-nの上に、-siが被さっている点です(2課)。
③terveisinはおおむね「草々」に相当する、手紙ではおなじみの締めの文句ですが、文法的には「複数具格」と呼ばれる形です。したがってその前のodottava(動詞odottaa「待つ」の能動現在分詞(「~している」(8課)))も複数具格にハーモニーしています(21課)。