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フィンランド語講座

北海道フィンランド協会

homejuusto (白/青)カビチーズ

2022年7月27日北海道新聞朝刊記事

juusto「チーズ」は初級~中級レベルの多くの皆さんの語彙に入っていると思いますが、home「カビ」はまだ語彙に入っていない方も多いと思います。

homejuustoはValio社のAuraに代表されるsinihomejuusto(sini=sininen「青」)とcamembertに代表されるvalkohomejuusto(valko=valkoinen「白」)に大別されるようです。

homeは-e終わりですから、単数属格はhomeen単数分格はhomettaなのに注意です。

と、ここまでは夏休み前、8月2日の初級コースで紹介しましたが、一つ付け加えましょう。カマンベールcamenbertのような外来語の格変化です。フィンランド語は-rtのような子音の連続で語が終わることはないので、そのような際には母音のiをクッションにして格変化させることは中級以上の方なら知識として知っているでしょうから、単数属格はcamenbertin、それを元にして「カマンベール(チーズ)の中に」のように単数内格にしたい場合は、camenbertissaとなります。興味深いのは発音で、単数内格の場合「カメンベルティッサ」のようにフィンランド語得意のローマ字読みすることはせず、原語のフランス語に近い、あるいは日本語にも近い「カマンベーリッサ」のように発音する(少なくとも最後の-tは発音しない)のが一般的なようです。加えて、この-bertの母音はäに近い母音ということもあり、camenbetissä-ssäの語尾を使う形も許されているのが面白いです。

上記のような煩わしさを避けたいのなら、語は長くなりますが、「カマンベール(の)チーズ」、camenbertjuustoあるいはcamenbertinjuustoを使って、「チーズ」juustoの部分を格変化させれば簡単でしょう(単数属格-juuston単数分格-juustoa)。

hyönteinen (昆)虫

先日伊達市大滝区へ畑仕事に行き、朝から晩まで草取りに励んだのですが、油断して半袖で作業していたら、しこたま虫に食われました。

昆虫そのものもhyönteinenと言いますが、昆虫類は-nen終わりのものが多いです。mehiläinen「ミツバチ」、kovakuoriainen「(カブトムシなどの)甲虫類」、perhonen「蝶」、muurahainen「蟻」など、枚挙にいとまがありません。「ムカデ(百足)」に代表される多足類はフィンランド語では大げさなことにtuhatjalkainen、1000(tuhat)の足(jalka)を持つもの、になります。

では写真の「蛾」はフィンランド語で何でしょう?
答えは、yöperhonen、「夜」+「蝶」という発想です。

-nen終わりの語は、数字の10、すなわちkymmenen(単数属格kymmenen、単数分格kymmen複数分格kymmen)を除くと(他の例があればぜひご教示ください)、単数属格は-nen→-sen、単数分格は-nen→-sta/s複数分格は-nen→-sia/sに入れ替えると作ることができるのを再確認しておくと良いと思います。したがって「3匹のミツバチ」はkolme mehiläis、「たくさんの蟻たち」はpaljon muurahaisia(monta muurahaistaもOK)となります。 

viili 凝乳

viiliは「凝乳」と訳されることの多い、ビヨーンと伸びる、ヨーグルト(jogurtti)の親戚筋の乳製品。ベリーや果物ソースと一緒に食べることが多いです。フィンランド人で納豆を食べることに全く抵抗を感じない、むしろ好きな人が多い(北海道大学の女子留学生数名は、毎日のように納豆を食べているようです)のは、viiliのような食品の食感に慣れているからではないかと察しています。

viiliと間違いやすい語にvilliがあり、「野生の、ワイルドな」(形容詞)という意味です。

写真のviiliのカップに記されているフィンランド語、興味があったら解読してみて下さい(Arlaは「雪印」、「森永」のようなブランド名)。viiliのような物質名詞はラベルには単数分格形(viiliä)で表示されていることも多いです。

kiuas サウナストーブ

2017年8月13日(Läsäkoski, Mikkeli)

kiuas(サウナストーブ)は変化の難しい語で、単数分格はkiuasta単数属格はkiukaan(k:Φのkptあり)、複数分格はkiukaita(同左)。Kiuas on saunan sydän.「サウナストーブはサウナの心(臓)。」はフィンランドのことわざです。

1枚目の写真は私の恩師の川上セイヤさんの実家のサウナ。サウナストーンは人工石です。写真右側に少し見えているのは年季の入った木製の枕だったと記憶しています。

もう一枚は最も古い友人Jussi宅のrantasauna(岸辺(の)サウナ)のストーブ。このストーブはちょっと珍しい形をしていて、サウナストーンが、ストーブ上部にぽっかり空いた穴の中に置かれています。ひしゃくで水をかけてロウリュ(löyly)を出すのが少々やりずらいのですが、サウナに入っている間にサウナソーセージが(saunamakkara)焼けていく様子を楽しめるという余興があります。

2004年7月20日(Ruovesi)

katiska 梁(簗)やな・・・フィンランドの仕掛け網

2017年8月13日Mikkeliで

もう少し頻繁に豆知識を皆さんに提供したいと思いながら、忙しさにかまけて(私の忙しさなどは知れており、要領が悪いだけなのですが)投稿間隔が空いてしまうのが悩みなのですが、火曜初級コースで毎週紹介している「今日の1語」を投稿に活用すれば良いかもと思いつきました。

katiskaは中級以上のレベルの人でも語彙に入っていないかもしれません。都会ではまず見かけませんが、田舎ではよく見かける漁具です。私はどちらかというと田舎に知り合いが多いので、このkatiskaを岸辺で見かけるとフィンランドの田舎に来た気分になります。色は写真のように、鶏舎などで使う軽量の網そのものの金属色、たまに写真の後ろにあるように緑っぽいもの、青っぽいものもあるようですが、赤いものはまだ見たことがありません。赤ければリンゴ(omena)やハート(sydän)のように見えて可愛いと思うのですが。魚も警戒して簗の中に入ってこなくなるのかな?

katiskaのように-sk-の語尾を持つ語はkpt変化は起こしませんので、「~の」(単数属格)はkatiskan単数分格、たとえば「2つの仕掛け網」は2 katiskaaです。複数変化が難しく、「たくさんの仕掛け網」はpaljon katiskoita / katiskojaと2種類の複数分格が許されており、「仕掛け網たちの」はkatiskoiden / katiskoitten / katiskojenと3種の複数属格が許されているのに加え、ほとんど使われることはありませんが理論上は「第二属格」と呼ばれるkatiskainという第4の形も存在します。

viisi suomalaista vaihto-opiskelijaa 5名のフィンランド人留学生

あっという間に7月(heinäkuu「干し草の月」)を迎えました。またまた当ブログ欄への投稿間隔が空いてしまいました。

先週木曜日には私が非常勤を務める北大のフィンランド語入門コースに5名の留学生がゲストとして参加してくれ、うれしい限りでした。コロナ禍で新しい留学生は全く来道していないのかと思っていましたが、短期留学プログラムで4名が実は4月から北大で勉強しており(8~9月には帰国してしまうのが残念)、2度目の留学で6月末に札幌に来たばかりのPetra Nurmelaと合わせての計5名ということになりました。

せっかく授業に来てくれたので、人使いの荒い私は、受講生との初対面のあいさつ、発音練習などで活躍してもらいました。Petra以外の留学生の名前も記しておきます。

Jutta Joensuuさん
Miisa Myllykangasさん
Alma Ritvaniemiさん
Oskari Nieminen君

懲りずにまた北大の授業、フィンランド協会の月曜入門ハイブリッド授業などを来訪してくれると嬉しいのですが。

bensiini / bensa ガソリン

ガソリン(bensiini、通常はbensaがよく使われる)の値段(hinta)が高止まりしていて全く閉口してしまいます。もっと自分の足や自転車を使わなければと思いつつ、数百メートル先のコンビニへ車で出かけてしまいます。現在札幌では160円前後のリッター価格でしょうか。

フィンランドはどうやら現在日本の倍以上の値段のようです。レギュラーガソリンのリッター価格は概ね2.55€位、これを今日の為替レート(1ユーロ=140.82円)にかけ合わせると、359.091円です。

写真は2004年に撮影した、日本ではちょっと見かけない素敵な給油所、場所は正確には思い出せないのですが、オウルへ北上中のオストロボスニア地方のどこかで撮影したと記憶しています。この時のレギュラーガソリンの値段が別の写真に写っていましたが、1.179€でした。ガソリンスタンドbensiiniasemabensa-asema(後者がポピュラー)、「~へ」、「~に」、「~から」はそれぞれ-lle, -lla, -ltaの格変化になります。

フィンランドのスタンドはカフェや売店を併設していることが多いですが、そのような給油所はhuoltoasema(huoltoは「維持、メンテナンス」の意味)もよく使います。

ディーゼル(ガソリン)dieselと綴り、発音は[diisel]のようになります。

kaukokartoitus リモートセンシング

フィンランド大使館が中心となって行われた北海道フィンランドウイーク、終了しました。北海道フィンランド協会も多くのボランティアスタッフを提供することによって、少しはイベントの成功に貢献できたのではないかと思います。私自身も、5月28日・29日の週末にはモルック(mölkky)PRのお手伝い、先週の平日は授業をほとんど休講にして、イベント受付の手伝いや、実際にイベントへの参加など、てんてこ舞いでした。

水曜日の「林業デイ」を聴講していた時、リモートセンシングによる森林調査に関する発表がありました。リモートセンシングはフィンランド語で何だっけ、どこかで聞いた覚えがあるけど思い出せない、こういう場合はいち早く調べるか、ネイティブスピーカーに尋ねるのがお勧めです。当該イベントにはカレリア(Karjala)地方から、北カルヤラ県の知事他、かなり多くのフィンランド人参加者があったので、イベント後の交流会時に同じテーブルに座ったフィンランド人に尋ねました。kaukokartoitus、そうでした!kauko-は「遠(距離)、遠隔」などを意味し、kartoitusは「地図作成、製図」です。後者の要素は、名詞のkartta「地図」(単数属格kartan単数分格karttaa複数分格karttoja)、そこから派生した動詞のkartoittaa「地図を作成する、地図に描く」(タイプⅠ、tt:tのkpt変化あり)、それがさらに名詞化したものです。このように気になった時にすぐに確認した単語は、だいたい忘れないものです。ただし、20年前なら自信をもってそう言い切れましたが、今はちょっと自信ありません・・・

kuulostaa heprealta チンプンカンプン

水曜日の授業で忘れていた表現を思い出しました、kuulostaa heprealtaです。kuulostaa -ltAは中級以上の学習者は覚えておきたいコンビネーションで「~のように聞こえる」です。一方hepreaはイスラエルの公用語でもある「ヘブライ語」です。

「ヘブライ語のように聞こえる」とは全く理解不能な事柄について使うので、日本語なら「チンプンカンプン」といったところでしょうか。よく使っているネットのKielitoimiston sanakirjaにはSe oli minulle täyttä hepreaa.「それは私にとって完全な(täysi)ヘブライ語だった。」→「それは私にとって完全に理解不能/チンプンカンプンだった。」という例文が載っています。この場合は形容詞täysiとそれが修飾する名詞hepreaは単数分格形になっています。

「ヘブライ語のように聞こえる/完全なヘブライ語だ」が「理解不能」という意味で、他の言語でも使うことがあるのか、どなたかご存知だったら教えてください。

Turkki トルコ

フィンランドに続いてスウェーデンもNato加盟申請を正式決定、とのニュースが入ってきました。同時に、この両国の加盟にトルコが難色を示している、という報道もありました。両国の正式加盟の遅滞につながらなければよいのですが・・・

トルコはフィンランド語でTurkki(kk:kのkpt変化があるので「~の」(単数属格)はTurkin、「~に」(単数内格)はTurkissa)、これを小文字で表記したturkki(発音はもちろんTurkkiと同じですし、文頭に来れば大文字で書くことになりますが)は3つの意味があり:
1 トルコ語
2 毛皮
3 船(舶)[alus]の(船)底[lattia「床」]
3の意味(aluksen lattia)は知りませんでした。知っているつもりの語もこまめに辞書を引くことが大切ですね。こちらは使いそうな文法格としては、単数分格がturkkia複数分格はturkkejaです。

似た発音の語にtulkkiがあります。こちらは「通訳」。単数属格はtulkin単数分格はtulkkia複数分格はtulkkejaです。turkkiとtulkkiはrとlで意味が変わる語の例として、私はたまに取り上げます。「翻訳する」はkääntää(タイプⅠ、nt:nnのkpt変化あり)は語彙に入っている中上級者は多いと思いますが、「通訳する」はtulkata(タイプⅣ、kk:kのkpt変化あり)なので、こちらがまだ語彙に入っていなかった方は入れておいてください。