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フィンランド語講座

北海道フィンランド協会

väärä käännös 誤訳

mummu=isoäiti

最近は翻訳ソフトや翻訳アプリの精度向上が目覚ましく、私も苦手な英語の少し長い文章などで、内容をざっと把握するためにたまに使うことがあるのですが、フィンランド語の場合は、その多彩な格変化、比較的自由な語順等々の理由から、結構意味不明な、たまには珍訳と呼べるような訳が提示される場合も多いようです。

先日Zoomの個人授業を行っているMさんから、フィンランド人の知人の出産祝いにお祝いのメッセージをフィンランド語で送りたいので、翻訳アプリを使った文章をチェックしてもらえないかと依頼がありました。

フィンランド語で伝えたいメッセージ3文の最初は「ご出産おめでとうございます。」という、日本人相手ならごく普通の祝辞なのですが、この文の訳を翻訳アプリは、Onnittelut syntymästäsi.と表示しました。中級、テキストss2を使っている方なら、この文のどこが変か分かるかもしれません。

翻訳アプリの発想は以下の通りです。まず「お祝い」という名詞onnitteluの複数主格形(-t)、OKです。次に「生まれること」を表すsyntymäに「~について」の-stäを加えて、さらに「あなたの」を表す所有接尾辞(テキストss2の2課で履修)-siを加えました。

問題なのは、「出産」が「生むこと」ではなく「生まれること」で翻訳されている点で、この訳では、生まれた赤ちゃんに対して「あなたが生まれたことについておめでとう」という意味になってしまいます。

それでは「生まれること」ではなく「生むこと、生んだこと」という語を使えば、赤ちゃんのお母さんに対する祝辞になるではないか思う方もいるかもしれませんが、留学生のJussi曰く、「出産後のお母さんに対して、『出産』おめでとうという発想や習慣はフィンランド人にはない」とのこと。

では出産後のご両親にはどんな祝辞が自然かというと、たとえばOnnittelut perheenlisäyksestä.「家族(perhe)の(-n)、増えたこと(lisäys)について(-stä)、おめでとうございます。」などがお勧めのようです。

Miaのバイトする古本屋BOOKLABに行ってみました!

Miaと彼女が選んだ北欧関連書籍

今週に入りすっかり涼しくなりましたが、先週の真夏日にMiaのバイトするBOOKLABに行き、小さな北欧気分に浸ってきました。

Miaもちょうど店番をしていて、久しぶりに生でのフィンランド語の会話も楽しみ、小さなスペースに効率的に置かれた北欧関連の書籍の展示やフィンランドの写真なども堪能してきました。涼しい店内でくつろいでいると、Miaが系列店の在庫だと言って、ちょうど探していたフィンランド関連の雑誌のバックナンバーとフィンランド語で書かれた絵本を持ってきてくれました。渡りに船、と購入すると10%の「友達割引」のおまけつきでした。

この北欧の小展示、15日までとなっていますが、実質14日までの展示だそうです。詳しくは7月5日の記事、
https://finkouza-2.hokkaido-finland.com/?p=6206
をご覧ください。

友達割引で購入

 

 

rakugo, japanilainen kerronnallinen komiikka 落語

先週土曜日、数年ぶりに落語を聞きに行きました。会場へ行く途中で、同じ建物の、1階違いの場所へ向かっているカンテレの先生でもある佐藤美津子さん(フィンランド協会常務理事)とバッタリ出会ってしばし立ち話と、嬉しい驚きもありました。

古典落語の名手の柳家さん喬師匠の独演会。数年前に行ったのもさん喬師匠が出演していた落語会でした。演目は「千両ミカン」、「寝床」、そして大ネタの「唐茄子屋政談」。「最近は食べ物に『旬』がなくなりましたね」と「千両ミカン」のマクラで語られたように、食べ物が噺の中にたくさん出てきました。

言葉に関わる者として、ことばと仕草(さん喬師匠は日本舞踊の名取でもあるそうで優美な動きでした)で人の心を掴む落語は、久しぶりに自分の生業を考える良い機会ともなりました。

落語はフィンランド語版ウィキペディアによればjapanilainen kerronnallinen komiikka(日本の、物語風の、コメディー)と訳されています。演目にもある「ミカン」ですが、私たちが使っているテキストsuomea suomeksi 1には「オレンジ」appelsiiniが出てきますが、もう少し皮が薄くて酸味が弱い「マンダリンオレンジ」はmandariini、「温州みかん」(これが演目のなかの「紀州ミカン」に一番近いかも)はsatsuma(ご想像のように「薩摩」)が使われる場合もあります。

唐茄子はナスビ(munakoiso)のことではなく、カボチャ(kurpitsa)の異名と初めて知りました。それゆえに、唐茄子を左右に十個ずつ入れて天秤を担いでいる若旦那がふらついている様子が、やっと想像できました。

kettu, repo キツネ

札幌市白石区に借りている市民農園の区画にキツネが登場。もっとも、もっと市内中心部に近いところでヒグマも出没した札幌ですから、何も驚くことはありませんが。

キツネがフィンランド語でkettu(単数属格:ketun、単数分格:kettua、複数分格:kettuja)というのは覚えておられる方も多いと思います。いつもお世話になっているKaisa Häkkinen教授の語源辞典によると、kettuは「薄い皮」、「表層」などを表すkesiの派生語だそうです。狩猟の対象としてのキツネを考えれば頷ける説明です。

kettuよりもっと古いキツネを表す語はrepo(単数属格:revon、単数分格repoa、複数分格repoja)で、revontulet「オーロラ」はrevon「キツネの」+tulet「火(tuliの複数形)」です。がんばって巻き舌で発音しないと、lepoは「休息」になってしまうので注意です。

童話などではキツネさんは、Kettu Repolainenの名前で登場することも多いようです。

lohikeitto サーモンスープ

しょっぱくしすぎなければ普通は大丈夫

ラウマ(Rauma)市の食堂のlohikeitto

新鮮な(tuore)ディル(tilli)が手に入ったのでサーモン(lohi)スープ(keitto)を作りました。

私のような無精者でもほぼ失敗せずに作れ、調理時間も短くて済むので大助かりです。代表的なフィンランド家庭料理の一つなのでレシピは出回っているかと思いますが、私は、札幌在住歴が長く現在は神奈川在住のJuha君のおばさんのレシピでいつも作っています。

今週土曜日は夏至祭(juhannus)、数名のフィンランド人とこじんまりと祝う予定です。

 

toivoton tapaus しょうもない奴

現在水曜・金曜サークルの文法の復習に使っているHarjoitus tekee mestarin(文字通りは「練習が名人(mestari)を作る」)は大変良い教材で、平易で参考になる例文も多いのですが、著者の好みなのか、マニアックな、あるいは妙にひねくれた文章がたまに出てきます。

toivoton tapausはこれも文字通りは「望みのない出来事/状況」ですが、人間に関して使うと「しょうもない奴」の意味だと、JussiとJulianaが教えてくれました。先日Siljaに会った時にこの言い回しを話題に出して、具体的な例を求めたところ、「パチンコで大負けしたから『もうやめた』と言っていたのに、次の日には何事もなかったかのように打っているような奴」とすごくわかりやすい例を出してくれました。まさに「しょうもない奴」です。

toivoton tapausが話題になった授業では、ゲストの2名はuusavuton(uus=uusi「新しい」+avuton「救いのない」)という面白い言葉も教えてくれました。それまで過保護に育てられ、親がすべてをやってきたおかげで、18歳になって独り立ち(フィンランドでは18歳が成人年齢)したときに、料理、洗濯など全くできない人のことだそうです。そういう2名が同居するとuusavuton nuoripari(若いカップル)になります。シリヤによれば、上記のような使い方の他に、年配の人が自分の価値観で「この若者は✕✕もできない人だ」的な、少々上から目線の使い方をすることもあるとのことです、「今どきの若者は✕✕もできないのか」の「今どきの若者」に近い表現ですね。

nen-päätteisistä paikannimistä -nen終わりの地名について

先週の木曜中級、金曜サークルでは-nen終わりの地名を話題にしました。-nen終わりの名字がたいへん多いことをご存知の方も多いと思いますが、-nen終わりの地名はそう多くはありません。そのかわりに難しい格変化をするものが多いです。

まず押さえておきたいのは、多くの-nen終わりの地名が複数変化するということです。興味がある方は所在地を地図で確認してもらえればと思いますが、北オストロボスニア地方のOulainen市、ピルカンマー地方のスパで有名なIkaalinen市、ヘルシンキの中のSörnäinen地区などは、「~へ」、「~に」、「~から」と言う時、複数でS系の場所格で変化します。つまりOulaisiin, Oulaisissa, Oulaisista、それからIkaalisiin, Ikaalisissa, Ikaalisista、そしてSörnäisiin, Sörnäisissä, Sörnäisistäです。同じ複数変化でもL系の場所格で変化する地名もあります。人口4千人を切る中央フィンランドの小さな自治体Uurainenは、Uuraisille, Uuraisilla, Uuraisiltaと変化します。またこれらの地名は「~の」の形をとる時、複数属格になります(ss1最後の27課で履修)。-nen終わりの複数属格は-sten(第2属格)が-sien(第1属格)より好まれますから、Oulainen市はOulaisten kaupunkiとなります。

第8代大統領Urho Kaleva Kekkonen(在任1956-82)

上記に反して単数変化をするのが、民族音楽祭で有名な中央オストロボスニア地方の小さな自治体Kaustinenで、Kaustiselle, Kaustisella, Kaustiseltaと変化し、カウスティネン町はKaustisen kuntaと単数属格になります。町外の人はKaustisille, Kaustisilla, Kaustisiltaのような複数変化をさせている人も多いようです。

私の旧友のJussiが住んでいるピルカンマー地方のRuovesi町にはUrho Kekkonen大統領の名字と同じKekkonenという集落があり、この地名もKaustinen同様Kekkoselle, Kekkosella, Kekkoseltaと変化します。昔は郵便局があり、ケッコネン大統領の信奉者やファンがKekkonenの消印を求めに来たり、ハガキを投函しに来たと聞きました。

 

kissaihminen vai koiraihminen? 猫派、それとも犬派?

私は昔はkoiraihminen、今はkissaihminenです

コロナ禍の中、昨年度は留学生連中がオンライン疲れしていたこともありましたが、授業へゲストを呼ぶ機会が大変少なくなっていまい、受講生の皆さんの中でも残念に思われていた人が多かったかと思います。

今年度は、授業へ参加してくれたフィンランド人への謝礼額も少し増やし、留学生には自宅で手軽にできるアルバイトも兼ね、私もネイティブの語感がないと答えられない類の質問に答えてもらったり、新しい言い回しを教わったり、生徒さんも遠隔とはいえネイティブの発音を聞け、小さな交流を深めていく場として、語学講座を活用してもらえればという考えで自分の担当コースを行っています。

先週の金曜日にはJussiとJulianaの2名が上級サークルに参加してくれました。男女のゲストが参加してくれるのは他のコース、たとえば入門コースでも好評で、同じネイティブでも微妙に発音やイントネーションが違ったりするのを聞き比べたりするのは、大変参考になるようです。

授業では「猫」+「人」=「猫派」のkissaihminen、「犬」+「人」=「犬派」のkoiraihminen(Oletko (sinä) kissaihminen vai koiraihminen?「あなたは猫派、それとも犬派?」は気軽に尋ねることのできる、また会話も弾みやすい便利な質問です)の話題のあと、結構よく使う語としてゲスト両名から、それぞれの動物の後に「熱」を表すkuumeをくっつけたkissakuume, koirakuumeという語を教えてもらいました。「猫/犬が飼いたくて飼いたくて仕方ない気持ち」のことだそうです。ここでのkuumeは「熱情」の意味ですね。vauvakuume(vauvaは「赤ちゃん」)と言うと赤ちゃんが熱を出したわけではなく、特に女性が感じる子供が欲しい気持ちのことだそうです。大変参考になりました。両ゲスト、今後も面白い表現や言い回しを教えてください!

siemen 種

キャベツ(kaali)

家に籠りきりでは気も滅入るので、今年もGW初めに作物の種をポットやプランターに植え、発芽したら一部を毎年Siljaと一緒にやっている市民農園へ、一部を伊達市大滝区の藤田さんから借りている畑に持って行って植えようと考えました。GW初めに寒い日が続いたせいか、なかなか発芽しませんでしたが、5月10日を過ぎてから、ディル(tilli)、レッドビーツ(punajuuri)、キャベツ(kaali)と次々発芽し始め、昨日になってニラ(kiinansipuli:「中国」Kiina+「の」-n+「玉ねぎ」sipuli)、それから昨年の古い種だったので発芽しないかなと案じていた長ネギ(purjo[sipuli])も発芽し始めました。

それにしても暗い気持ちになるのは種の原産国(alkuperämaa)。2種類あったキャベツの種の片方は生産地が新潟県でしたが、「札幌大球」を名乗るキャベツの種の生産地は中国、長ネギはチリ(Chile)、レッドビーツはアメリカ(Yhdysvallat)、ニンジン(porkkana)はイタリア(Italia)といった具合で、国産の種がほとんどありません。できるだけ国産の(kotimainen)種を植えたいと思っているのですが。日本の農業(maatalous)、大丈夫でしょうか。

長ネギ(purjo[sipuli])の発芽

「種」はフィンランド語でsiemen、-nenという語尾を除くと辞書形が-nで終わる名詞・形容詞はそう多くないので、格変化が少し難しい語です。「2つの種」はkaksi siementä(単数分格)、「たくさんの種」はpaljon siemeniä(複数分格)、「(1つの)種の」はsiemenen(単数属格)、「種(たち)の」はsiemenien(複数[第1]属格)あるいはsiementen(複数[第2]属格)です。

 

Tsugaru – kulkija käy kotona 『津軽』- 放浪者家に帰る

私にしては非常に稀有のことなのですが、4月27日の「ブログ」欄でやってみようかと表明した、太宰治著『津軽』のフィンランド語版をGW中に実際に読了することができました。分からない単語や表現、忘れてしまった語など山ほどあるのですが、原書で何度も読んだことがあるおかげで、蟹田でのSさんの接待ぶり、竜飛の旅館での親友N君との一夜、小泊での元子守のたけとの再会などの有名な場面を思い出しながら読むことができました。

日本独特の風習や食べ物など、訳者のKai Nieminen氏はさぞフィンランド語訳に苦労したことと思います。訳書の最後には10ページほどの説明部分があり、日本の旧国名、歴史上の人物、フィンランドではポピュラーでない食べ物などについて解説が加えられています。特に最後に注目して、数語を紹介します。

アンコウ(鮟鱇) krotti
ワラビ(蕨) sanajalka
ゼンマイ(薇) röyhysaniainen
フキ(蕗) ruttojuuri
ウド(独活) ruoka-aralia
ナメコ(滑子) pyökinkantosieni

フィンランド語も知らなかったり忘れてしまっていた語ばかりですが、蕗と独活以外は漢字でも書くことができず、日本語の難しさと、そして奥深さを感じました。