*

フィンランド語講座

北海道フィンランド協会

toivoton tapaus しょうもない奴

現在水曜・金曜サークルの文法の復習に使っているHarjoitus tekee mestarin(文字通りは「練習が名人(mestari)を作る」)は大変良い教材で、平易で参考になる例文も多いのですが、著者の好みなのか、マニアックな、あるいは妙にひねくれた文章がたまに出てきます。

toivoton tapausはこれも文字通りは「望みのない出来事/状況」ですが、人間に関して使うと「しょうもない奴」の意味だと、JussiとJulianaが教えてくれました。先日Siljaに会った時にこの言い回しを話題に出して、具体的な例を求めたところ、「パチンコで大負けしたから『もうやめた』と言っていたのに、次の日には何事もなかったかのように打っているような奴」とすごくわかりやすい例を出してくれました。まさに「しょうもない奴」です。

toivoton tapausが話題になった授業では、ゲストの2名はuusavuton(uus=uusi「新しい」+avuton「救いのない」)という面白い言葉も教えてくれました。それまで過保護に育てられ、親がすべてをやってきたおかげで、18歳になって独り立ち(フィンランドでは18歳が成人年齢)したときに、料理、洗濯など全くできない人のことだそうです。そういう2名が同居するとuusavuton nuoripari(若いカップル)になります。シリヤによれば、上記のような使い方の他に、年配の人が自分の価値観で「この若者は✕✕もできない人だ」的な、少々上から目線の使い方をすることもあるとのことです、「今どきの若者は✕✕もできないのか」の「今どきの若者」に近い表現ですね。

nen-päätteisistä paikannimistä -nen終わりの地名について

先週の木曜中級、金曜サークルでは-nen終わりの地名を話題にしました。-nen終わりの名字がたいへん多いことをご存知の方も多いと思いますが、-nen終わりの地名はそう多くはありません。そのかわりに難しい格変化をするものが多いです。

まず押さえておきたいのは、多くの-nen終わりの地名が複数変化するということです。興味がある方は所在地を地図で確認してもらえればと思いますが、北オストロボスニア地方のOulainen市、ピルカンマー地方のスパで有名なIkaalinen市、ヘルシンキの中のSörnäinen地区などは、「~へ」、「~に」、「~から」と言う時、複数でS系の場所格で変化します。つまりOulaisiin, Oulaisissa, Oulaisista、それからIkaalisiin, Ikaalisissa, Ikaalisista、そしてSörnäisiin, Sörnäisissä, Sörnäisistäです。同じ複数変化でもL系の場所格で変化する地名もあります。人口4千人を切る中央フィンランドの小さな自治体Uurainenは、Uuraisille, Uuraisilla, Uuraisiltaと変化します。またこれらの地名は「~の」の形をとる時、複数属格になります(ss1最後の27課で履修)。-nen終わりの複数属格は-sten(第2属格)が-sien(第1属格)より好まれますから、Oulainen市はOulaisten kaupunkiとなります。

第8代大統領Urho Kaleva Kekkonen(在任1956-82)

上記に反して単数変化をするのが、民族音楽祭で有名な中央オストロボスニア地方の小さな自治体Kaustinenで、Kaustiselle, Kaustisella, Kaustiseltaと変化し、カウスティネン町はKaustisen kuntaと単数属格になります。町外の人はKaustisille, Kaustisilla, Kaustisiltaのような複数変化をさせている人も多いようです。

私の旧友のJussiが住んでいるピルカンマー地方のRuovesi町にはUrho Kekkonen大統領の名字と同じKekkonenという集落があり、この地名もKaustinen同様Kekkoselle, Kekkosella, Kekkoseltaと変化します。昔は郵便局があり、ケッコネン大統領の信奉者やファンがKekkonenの消印を求めに来たり、ハガキを投函しに来たと聞きました。

 

kissaihminen vai koiraihminen? 猫派、それとも犬派?

私は昔はkoiraihminen、今はkissaihminenです

コロナ禍の中、昨年度は留学生連中がオンライン疲れしていたこともありましたが、授業へゲストを呼ぶ機会が大変少なくなっていまい、受講生の皆さんの中でも残念に思われていた人が多かったかと思います。

今年度は、授業へ参加してくれたフィンランド人への謝礼額も少し増やし、留学生には自宅で手軽にできるアルバイトも兼ね、私もネイティブの語感がないと答えられない類の質問に答えてもらったり、新しい言い回しを教わったり、生徒さんも遠隔とはいえネイティブの発音を聞け、小さな交流を深めていく場として、語学講座を活用してもらえればという考えで自分の担当コースを行っています。

先週の金曜日にはJussiとJulianaの2名が上級サークルに参加してくれました。男女のゲストが参加してくれるのは他のコース、たとえば入門コースでも好評で、同じネイティブでも微妙に発音やイントネーションが違ったりするのを聞き比べたりするのは、大変参考になるようです。

授業では「猫」+「人」=「猫派」のkissaihminen、「犬」+「人」=「犬派」のkoiraihminen(Oletko (sinä) kissaihminen vai koiraihminen?「あなたは猫派、それとも犬派?」は気軽に尋ねることのできる、また会話も弾みやすい便利な質問です)の話題のあと、結構よく使う語としてゲスト両名から、それぞれの動物の後に「熱」を表すkuumeをくっつけたkissakuume, koirakuumeという語を教えてもらいました。「猫/犬が飼いたくて飼いたくて仕方ない気持ち」のことだそうです。ここでのkuumeは「熱情」の意味ですね。vauvakuume(vauvaは「赤ちゃん」)と言うと赤ちゃんが熱を出したわけではなく、特に女性が感じる子供が欲しい気持ちのことだそうです。大変参考になりました。両ゲスト、今後も面白い表現や言い回しを教えてください!

siemen 種

キャベツ(kaali)

家に籠りきりでは気も滅入るので、今年もGW初めに作物の種をポットやプランターに植え、発芽したら一部を毎年Siljaと一緒にやっている市民農園へ、一部を伊達市大滝区の藤田さんから借りている畑に持って行って植えようと考えました。GW初めに寒い日が続いたせいか、なかなか発芽しませんでしたが、5月10日を過ぎてから、ディル(tilli)、レッドビーツ(punajuuri)、キャベツ(kaali)と次々発芽し始め、昨日になってニラ(kiinansipuli:「中国」Kiina+「の」-n+「玉ねぎ」sipuli)、それから昨年の古い種だったので発芽しないかなと案じていた長ネギ(purjo[sipuli])も発芽し始めました。

それにしても暗い気持ちになるのは種の原産国(alkuperämaa)。2種類あったキャベツの種の片方は生産地が新潟県でしたが、「札幌大球」を名乗るキャベツの種の生産地は中国、長ネギはチリ(Chile)、レッドビーツはアメリカ(Yhdysvallat)、ニンジン(porkkana)はイタリア(Italia)といった具合で、国産の種がほとんどありません。できるだけ国産の(kotimainen)種を植えたいと思っているのですが。日本の農業(maatalous)、大丈夫でしょうか。

長ネギ(purjo[sipuli])の発芽

「種」はフィンランド語でsiemen、-nenという語尾を除くと辞書形が-nで終わる名詞・形容詞はそう多くないので、格変化が少し難しい語です。「2つの種」はkaksi siementä(単数分格)、「たくさんの種」はpaljon siemeniä(複数分格)、「(1つの)種の」はsiemenen(単数属格)、「種(たち)の」はsiemenien(複数[第1]属格)あるいはsiementen(複数[第2]属格)です。

 

Tsugaru – kulkija käy kotona 『津軽』- 放浪者家に帰る

私にしては非常に稀有のことなのですが、4月27日の「ブログ」欄でやってみようかと表明した、太宰治著『津軽』のフィンランド語版をGW中に実際に読了することができました。分からない単語や表現、忘れてしまった語など山ほどあるのですが、原書で何度も読んだことがあるおかげで、蟹田でのSさんの接待ぶり、竜飛の旅館での親友N君との一夜、小泊での元子守のたけとの再会などの有名な場面を思い出しながら読むことができました。

日本独特の風習や食べ物など、訳者のKai Nieminen氏はさぞフィンランド語訳に苦労したことと思います。訳書の最後には10ページほどの説明部分があり、日本の旧国名、歴史上の人物、フィンランドではポピュラーでない食べ物などについて解説が加えられています。特に最後に注目して、数語を紹介します。

アンコウ(鮟鱇) krotti
ワラビ(蕨) sanajalka
ゼンマイ(薇) röyhysaniainen
フキ(蕗) ruttojuuri
ウド(独活) ruoka-aralia
ナメコ(滑子) pyökinkantosieni

フィンランド語も知らなかったり忘れてしまっていた語ばかりですが、蕗と独活以外は漢字でも書くことができず、日本語の難しさと、そして奥深さを感じました。

sima シマ

シマ(sima)はメーデー(vappu、フィンランドでは主に高校卒業資格取得者や大学生のお祭りで祝日)の頃よく飲まれるノンアルコール~発酵の過程で生じた微量のアルコールを含む炭酸飲料です。留学時代、ルームメートのフィンランド人からその存在を知り、彼が作ってくれたsimaを飲んだ覚えがありますが、それから長年この味から離れていました。おうち時間が長くなったので、久しぶりに作ってみようと思い立ちました。

室温で発酵中(瓶詰めする前段階)

作り方は簡単で、約2リットル弱のsimaを作るのに、
水:1.5リットル
レモン:小1個
ドライイースト:2g
グラニュー糖:100g
ブラウンシュガー:100g
レーズン:適量
1)半量の水を沸騰させ、2種類の砂糖とスライスしたレモンを加え、砂糖が完全に溶けるまで混ぜる。
2)残りの水を加え、人肌くらいの温度になったらイーストを加え、完全に溶かし、24時間そのまま室温で放置。
3)きれいに洗ったペットボトルに濾して7~8分目まで(発酵するので)移し、少量の砂糖とレーズンを数粒加える。
4)室温で3日くらい、冷蔵庫で1週間ほど冷やしたら完成。レーズンが浮いてきたらできあがりなので、その後は冷蔵庫で保存。

1回目はイーストの量が少し多かったせいかやや強炭酸のsimaになりましたが、まあまあうまくいったと思います。現在2回目のものが冷蔵庫で発酵中です。ヘルシンキのお土産屋さんノルディスからも、sima製作キットを買ったので、後日作って飲み比べてみようと思います。

「発酵する」という動詞は、「行ってくる」という意味で入門~初級レベルで習うkäydäを使い、「発酵」はその動名詞(テキストss1で勉強している人は17課で履修)käyminenを使うということを知っていると便利です。

Osamu Dazai 太宰治

『魚服記』中の滝のモデルとされる「藤の滝」

太宰治は高校生の時に結構ハマり、20代でも無性に読みたくなった時期があり、その後すっかり縁が切れていましたが、2012-13年度に北大に留学していたEemeliから、太宰治の『津軽』がフィンランド語訳されていることを知り、2013年の3月と2015年の桜の季節に彼と共に、太宰治と『津軽』にゆかりのある地を巡る旅をしました。

『津軽』にゆかりのある地を訪ねる太宰ファン、あるいは地元の研究家は結構いるようで、そういう人たちの訪問記などを参考にしながら、奥山へレンタカーで分け入って、たとえば『晩年』中の『魚服記』のモデルとされている滝を探したりしました。3月の旅行の終盤ではEemeliは津軽鉄道の津軽中里から五所川原までストーブ列車で移動、私は昔乗ったことがあったのでレンタカーで移動、列車も車も猛吹雪で一時立ち往生、列車の方が少し立ち往生の時間が長かったですが、無事に五所川原の駅で再会できて安堵したことなどが懐かしく思い出されます。

現在札幌の中島公園にある北海道立文学館で「太宰治 創作の舞台裏」という特別展示が行われています。先週中島公園近くにあるフィンランド協会で事務処理があった時のついでに、この特別展示を見てきました。根気のない私にしては珍しく長く1時間くらいは会場にいたでしょうか。その間来訪する人も2,3人で、ゆっくり創造のプロセスを鑑賞することができました。太宰ファンでなくても、興味を引かれる展示だと思います。

Kai Nieminen訳のTsugaruは、このタイトルではフィンランド人が何のことかさっぱりわからないであろうことを考えてKULKIJA KÄY KOTONA「放浪者家に帰る」的なサブタイトルがつけられています。GW中に何年かぶりにフィンランド語で『津軽』読んでみようかな。

 

jättiläisbambunverso 巨大タケノコ

長さ(高さ)40cm超え!

お向かいさんからタケノコのおすそ分けをもらいました。千葉県の親戚から10本くらい送ってきたとのことですが、このサイズのタケノコが10本入った箱は相当大きなものだったのではないでしょうか?私は北海道で良く獲れる山菜のネマガリダケ(チシマザサ)は好きですが、孟宗竹のタケノコは何かサイズばかり大きくて固いようなイメージがあって今まで敬遠していました。ところがこの巨大タケノコ、本当に柔らかくえぐみも全くなく、タケノコに対する見方が変わりました。

「竹」bambuに属格(「~の」)のサインの-nをつけ、これに「新芽、若芽」を意味するversoをつなげたbambunversoが「タケノコ」に相当します(bambun versoと分けて書く場合もあり)。これに「巨大な」をあらわす複合語の先頭部分jättiläis-(あるいはjätti-)を付けると「巨大タケノコ」ということになるでしょうか。

ダイオウイカはjättiläiskalmari(kalmariは「イカ」)、ジャイアントパンダはjättiläispanda(単にpanda、isopandaもポピュラー)となります。

フィンランド語木曜初級コースの19名がテキストsuomea suomeksi1を修了しました!

2年前の初回授業(2019/4/11)

2019年度にフィンランド語の受講を開始した皆さんを中心に、過去受講歴があったり自学自習で多少の知識があり今年度からZoomを利用した遠隔授業授業で勉強を再開・継続された皆さん、合わせて19名が入門・初級用のテキストsuomea suomeksi 1「フィンランド語をフィンランド語で1」を先週の今年度最終授業で修了されました。おめでとうございます!Onneksi olkoon!

思い返せば、2年前は過去最高の40名で入門コースがスタート(対面授業)、残念ながら多くの方がこの2年の間に受講を断念されてしまいましたが、一方コロナ禍による遠隔授業が幸いして、対面授業の会場には来ることのできない札幌圏外の受講者が増え、今回の修了者のうち3名が本州在住、1名が札幌圏外の道内在住者を占めるまでになりました。今回は過去最大の修了者数だと思います。

19名の終了者は以下の通りです:Nanamiさん、Kazueさん、Kozueさん、Kusumiさん、Tomomiさん、Moekoさん、Nonoさん、Yukiさん、Yuukoさん、Rieさん、Masaeさん、Saekoさん、Masakoさん、Sumikoさん、Aiさん、Yumiko Bさん、Yumiko Hさん、Kimikoさん、Sachieさん。リストアップして全員女性であることに気づきました。

何の権威もありませんが、修了者には修了証をお送りします。皆さんと一緒に祝杯を挙げることができないのが残念ですが、修了者のほとんどが引き続き来年度「中級コース」で勉強を希望されていることを嬉しく思います。今度は概ね1年半後、中級~上級用テキストsuomea suomeksi 2の修了を共に目指しましょう!

maailman onnellisin maa 世界で一番幸せな国

ともあれ、Eläköön Suomi!「フィンランド万歳!」

先週末の国際連合(YK=Yhdistyneet kansakunnat)の世界幸福度報告の中で、フィンランドが4年連続「世界幸福度ランキング」1位に輝きましたね。関係者としては嬉しい限りですが、当のフィンランド人たちはそんなに自慢することも意識することもなく、「フィンランドに生まれたのは宝くじに当たったのと同じくらい幸運だ」と考えながらも、税金の高さや政府のやり方に結構文句を言っています。

「世界で一番幸福な国」はさまざまな指標を数字化したものを基にランキングをつけているようですが、私は正直その順位、指標や点数化にはあまり興味はありません。むしろフィンランドを含めた北欧5か国がなぜ常に上位にランキングしているのか、その背景となるものにとても興味があります。先週金曜日のHIECC主催のオンラインセミナーで、ヘルシンキ在住のフィンランド日本協会副会長の下村有子さんがおっしゃっていましたが、他者や政府に対する「信頼」度の高さが、少なくともフィンランドでは平時でも、そしてこのコロナ禍のような事態の中でも、強くブラスに働いているように感じます。

フィンランド語のネタで締めくくりましょう。「幸せ(名詞)」はonni、「幸せな(形容詞)」はonnellinen、そしてその最上級はonnellisinで最後の-inがフィンランド語では形容詞の最上級のサインとなります。これは早ければ1年後くらいに木曜コースの皆さんがテキストsuomea suomeksi 2の12課と13課で学ぶことですが、英語と違ってフィンランド語は形容詞の最上級-inからさらに単数14格、複数15格に理論上は格変化しますので、英語の比較表現に比べると圧倒的に難しく、テキストでもずいぶん後になってから学習することを余儀なくされる一つの要因となっています。

「世界」はmaailma、maaは最初「国」の意味で多くの学習者が習う語ですが、ここでは「土地、地面」。一方ilmaは「空気」ですから、フィンランド語の「世界」=「土」+「空」という構成ということになります。