Ajattelen, siis olen olemassa. 「我思う、故に我あり」
フランス語ではJe pense, donc je suis.ラテン語ではCogito ergo sum.英語ではI think, therefore I am.で表現される「我思う、故に我あり。」は哲学者デカルト(Descartes)の有名な命題ですが、フィンランド語ではAjattelen, siis olen [olemassa].です。[ ]は後述の理由から、通常省略しません。Ajattelenとolenの前にはもちろん主語のminäが省略されています。
ベリーやフキノトウの話題から突然哲学の話に飛躍したのには特別な理由はないのですが、先日掃除をしていた際、大学1年生の時に確か「科学論ゼミナール」という講義題目で受講した授業の教科書、岩波文庫の『方法序説』が出てきたので、懐かしく思いながらこのセリフも併せて思い出したのです。
本文だけだと80ページくらいの内容を、1年間かけて先生と生徒3名(1名は休みがちだったのでたいていは私ともう一人)で、主に先生の説明を聞きながら読み進めていくのですが、初めて哲学というものに本格的に触れたせいか、また、淡々とした先生の口調の中にも啓発されるフレーズが多数あり、さらに気楽に何でも質問できる雰囲気だったので、もう数十年が経ちますが、最も記憶に残っている大学の授業の一つとなっています。今その書き込みを眺めても、ちんぷんかんぷんの部分が多々ありますが、当時は分かった気になって「プチ哲学者」気取りでいたのかもしれません。ただ授業に出席し、授業中に質問するだけで他の課題は全くなく、「優」がもらえましたから、のんびりした時代でもありました。
このデカルトの命題のフィンランド語訳は、私はss1の思考に関する動詞の紹介(17課s110のHuomatkaaの4つ目の■)時に合わせて紹介しています。luulla(タイプⅠ)はおそらくもっとも最初に習う思考に関係する動詞「思う」、ajatella(タイプⅢ、tt:tのkpt変化に注意!)はそれよりもう少し考えが深い感じの「考える」、uskoa(タイプⅠ)は「信じる」です。ajatellaとほぼ同程度の思考の深さを持つ動詞(ほぼ同義)としてmiettiä(タイプⅠ、tt:t)があり、これもよく使うので私はこのs110で紹介するようにしています。
ものが「ある」、人が「いる」ことを表現する際は、フィンランド語のbe動詞であるolla動詞を使えば用足りますが、「存在する」ことを強調したければ、olla動詞を二つ重ね、片方は第3不定詞(=MA不定詞)の内格(-ssA)にします。第3不定詞についてはss1の16課で勉強します。上級クラス・サークルの方はss2のs93のHuomatkaaでも取り上げられていたことを思い出していただければと思います。