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フィンランド語講座

北海道フィンランド協会

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複合語を覚えて語彙拡充を

これから2か月強、クラスの授業を実施しないことが決まりました。残念ではありますが、長い春休みだと考えて復習に力を入れてみてはどうでしょうか。すでに今週の月曜日から、私が担当の入門・中級・上級・上級サークルの各コースの皆さんには週1回、簡単な課題(やる、やらないは自由です)を出すようにしています。

また、受講生の皆さん、それから4月から新たにフィンランド語を学ぶ気満々だった皆さんのモチベーション低下を防ぎ、今後の勉強にも役に立つような情報や豆知識をブログ欄にときどきは掲載しようと思います。今日はその第1回。

フィンランド語の多くの単語は、英語に代表されるゲルマン語系の言語とは異なっていることが多いので、一から(数字などはゼロから)覚えていかなければならず、学習者の多くから「(文法以前に)単語が覚えられない」という声をよく聞きます。教える側からしても視覚教材を使ったり、指導にクイズやゲーム性を持たせるようにしたり、歌を歌いながら覚えてもらったりと、さまざまな方策を考えていますが、初級者には「複合語をたくさん覚えるのは語彙拡充に大いに役に立ちますよ」と言うようにしています。

テキストsuomea suomeksi 1(ss1)の1課に出てきますが、kuvaは「絵」、kirjaは「本」ですからこの二つを繋げたkuvakirjaは「絵本」、つまりkuvakirjaという語を覚えれば、「絵本」だけでなく、「絵」と「本」という語も自分の語彙に入れることができます。英語もpicture bookですが分けて(2語で)書きますよね。

さらに日本人学習者にありがたいのが、複合語を作る際の発想が英語などよりも日本語にずっと似ていることが多いということです。同じくss1の1課に出てくるsanakirja「辞書」はsana「単語」+kirja「本」から成り立っていますが、英語はdictionaryです。教科書には出てきませんが、jääkaappi「冷蔵庫」はjää「氷」+kaappi「戸棚」という発想で、英語のrefrigeratorよりずっとわかりやすい発想で語形成がされています(英語の綴りに自信がなく辞書で調べるという面倒なおまけまでついてしまいました)。lento「飛行」+kone「機械」=lentokone「飛行機」、tuli「火」+vuori「山」=tulivuori「火山」、haju「香り」+vesi「水」=hajuvesi「香水」などは日本人にはとても分かりやすい語構成になっています。

ss1の12課に登場する語、tieto「知識」+sana「単語」+kirja「本」=tietosanakirja「百科事典」などは覚えてしまえば、一石四鳥、一石五鳥だということがお分かりかと思います。また日本語とは発想が違うものの、ほほえましい、あるいは共感できる語構成をしたものがたくさんあります。tieto「知識」+kone「機械」=tietokone「コンピューター」、meri「海」+siili「ハリネズミ」=merisiili「ウニ」、mesi「(蜂)蜜」+kämmen「手のひら」=mesikämmen「熊(karhu)[の愛称の一つ]」、極めつけはlohi「鮭」+käärme「蛇」=lohikäärme「龍」です。

複合語を意識する、すなわち一つの単語の中に複数の語が含まれているかを意識することは、長い語を正しく発音することにもつながるので、フィンランド語の読みを苦手としている学習者にもお勧めします。