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フィンランド語講座

北海道フィンランド協会

kuningatar 女王

イギリス、日本、二つの国葬(valtiolliset hautajaiset)が終わりました。

「女王」は残念ながらnainen「女性」+kuningas「王様」のコンビネーションではなく女性を表す接尾辞の-tArが入っている語です。 単数属格はkuningattaren複数主格はkunigattaret単数分格はkuningatarta複数分格はkuningattariaです。辞書形(単数主格)と単数分格以外はtt:tの逆kpt変化があります。

昔の文献などにはopettajatar(opettaja「先生」+接尾辞-tar =「女先生」)、sairaanhoitajatar(「看護師」+接尾辞-tar =「女性看護師」)といった語も見受けますが、この-tarという接尾辞は時代とともに廃れつつあり、この「女王」といった語で細々と生き続けています。

とはいえ死滅したわけではなく、すばらしい女性シンガーを「歌手」のlaulaja(男女ともに使うこと可)ではなくあえて「歌姫、ディーバ」の意味でlaulajatarと紹介したりする用法はたまに見かけます。

中級以上の方は、「女王」と合わせて、「王様」kuningasの格変化も研究してみると良いかと思います(こちらはnk:ngのkpt変化が関係する語です)。

tulivuori 火山

道東、川湯温泉近くの硫黄山(2022/8/25)

自分の持っていないものに憧れたり興味を抱く、人間ってそういう傾向がありますよね。自分の国にはない火山、ほとんど起こることのない地震、その他津波、台風などに興味を持つフィンランド人は多いので、それらをフィンランド語で何と言うか知っていると便利です。

まず第1弾としてtulivuori「火山」から。tuli「火」とvuori「山」の基本単語の組み合わせで、日本語と同じ発想の複合語、英語のvolcanoに比べてなんと分かりやすい発想なことか。

vuori「山」は格変化、特に単数分格の変化に注意する語で、単数属格はvuoren複数主格はvuoret、「たくさんの火山」と言いたい時は、monta vuorta(単数分格)かpaljon vuoria(複数分格)です。複数はほとんどの格が辞書形と同じvuori-からの変化となりますが「山々の」を表す複数属格はvuorien(第1属格)に負けず、vuorten(第2属格)もよく使われます。

valkosipuli ニンニク

昨秋植えて8月収穫のニンニク、乾燥中

夏休み前の火曜初級コースでは、kansallispuisto「国立公園」という語を引き合いに出して、「-nen終わりの語は、-nenの部分が-sとなって複合語を形成する」と説明しました。「国立の、国民の」を表す形容詞kansallinenは、kansallis-という形で、「公園」puistoと結びついて「国立公園」となる、というわけです。

しかし夏休み中に気がつきましたが、valkoinen「白(い)」、punainen「赤(い)」、sininen「青(い)」などの名詞と形容詞を兼ねる色彩を表す語は、valko-, puna-, sini-という形から複合語を形成します。

valkosipuli「ニンニク」はvalko-「白」+sipuli「玉ねぎ」です。夏休み明けの火曜初級コースでは、valko-で始まる複合語として他に、valkoviini「白ワイン」、Valko-Venäjä「ベラルーシ(=白ロシア)」などを語彙に入れておくことをお勧めしました。valkoinen viiniは通じますが、そのようには言いません。「赤ワイン」はもちろんpunaviiniですね。

kesäloma on päättynyt… 夏休み終了…

9月(syyskuu「秋(の)月)」になりました。クラスの授業は3週お休みにさせてもらいましたが、あっと言う間に夏休みが終わってしまいました。

ほとんど札幌にいて、合い間合い間に藤田さんと伊達市大滝区で畑仕事(peltotyö)、喜茂別町で藤田さん所有の「焚き火の森」で森の作業(metsätyö)をするような夏休みでしたが、先週末久しぶりに道東に小旅行に行ってきました。

karhu

高校時代の友人が摩周湖から車で15分位の弟子屈町内に単身赴任していて、住居の2Fに空き部屋があるとのことで数日居候させてもらいました。

久し振りの道東旅行でしたが、夜明け前の美しい摩周湖、知床でヒグマを結構至近距離から見ることができたり(幸運にも車の中からでした)と、良い気分転換になりました。

クラス授業、個人授業の皆さん、9月からまたよろしくお願いします。特に木曜上級コースの皆さんはテキストsuomea suomeksi 2修了間近です。切りの良い今月末の修了を目指して頑張りましょう!

homejuusto (白/青)カビチーズ

2022年7月27日北海道新聞朝刊記事

juusto「チーズ」は初級~中級レベルの多くの皆さんの語彙に入っていると思いますが、home「カビ」はまだ語彙に入っていない方も多いと思います。

homejuustoはValio社のAuraに代表されるsinihomejuusto(sini=sininen「青」)とcamembertに代表されるvalkohomejuusto(valko=valkoinen「白」)に大別されるようです。

homeは-e終わりですから、単数属格はhomeen単数分格はhomettaなのに注意です。

と、ここまでは夏休み前、8月2日の初級コースで紹介しましたが、一つ付け加えましょう。カマンベールcamenbertのような外来語の格変化です。フィンランド語は-rtのような子音の連続で語が終わることはないので、そのような際には母音のiをクッションにして格変化させることは中級以上の方なら知識として知っているでしょうから、単数属格はcamenbertin、それを元にして「カマンベール(チーズ)の中に」のように単数内格にしたい場合は、camenbertissaとなります。興味深いのは発音で、単数内格の場合「カメンベルティッサ」のようにフィンランド語得意のローマ字読みすることはせず、原語のフランス語に近い、あるいは日本語にも近い「カマンベーリッサ」のように発音する(少なくとも最後の-tは発音しない)のが一般的なようです。加えて、この-bertの母音はäに近い母音ということもあり、camenbetissä-ssäの語尾を使う形も許されているのが面白いです。

上記のような煩わしさを避けたいのなら、語は長くなりますが、「カマンベール(の)チーズ」、camenbertjuustoあるいはcamenbertinjuustoを使って、「チーズ」juustoの部分を格変化させれば簡単でしょう(単数属格-juuston単数分格-juustoa)。

hyönteinen (昆)虫

先日伊達市大滝区へ畑仕事に行き、朝から晩まで草取りに励んだのですが、油断して半袖で作業していたら、しこたま虫に食われました。

昆虫そのものもhyönteinenと言いますが、昆虫類は-nen終わりのものが多いです。mehiläinen「ミツバチ」、kovakuoriainen「(カブトムシなどの)甲虫類」、perhonen「蝶」、muurahainen「蟻」など、枚挙にいとまがありません。「ムカデ(百足)」に代表される多足類はフィンランド語では大げさなことにtuhatjalkainen、1000(tuhat)の足(jalka)を持つもの、になります。

では写真の「蛾」はフィンランド語で何でしょう?
答えは、yöperhonen、「夜」+「蝶」という発想です。

-nen終わりの語は、数字の10、すなわちkymmenen(単数属格kymmenen、単数分格kymmen複数分格kymmen)を除くと(他の例があればぜひご教示ください)、単数属格は-nen→-sen、単数分格は-nen→-sta/s複数分格は-nen→-sia/sに入れ替えると作ることができるのを再確認しておくと良いと思います。したがって「3匹のミツバチ」はkolme mehiläis、「たくさんの蟻たち」はpaljon muurahaisia(monta muurahaistaもOK)となります。 

viili 凝乳

viiliは「凝乳」と訳されることの多い、ビヨーンと伸びる、ヨーグルト(jogurtti)の親戚筋の乳製品。ベリーや果物ソースと一緒に食べることが多いです。フィンランド人で納豆を食べることに全く抵抗を感じない、むしろ好きな人が多い(北海道大学の女子留学生数名は、毎日のように納豆を食べているようです)のは、viiliのような食品の食感に慣れているからではないかと察しています。

viiliと間違いやすい語にvilliがあり、「野生の、ワイルドな」(形容詞)という意味です。

写真のviiliのカップに記されているフィンランド語、興味があったら解読してみて下さい(Arlaは「雪印」、「森永」のようなブランド名)。viiliのような物質名詞はラベルには単数分格形(viiliä)で表示されていることも多いです。

kiuas サウナストーブ

2017年8月13日(Läsäkoski, Mikkeli)

kiuas(サウナストーブ)は変化の難しい語で、単数分格はkiuasta単数属格はkiukaan(k:Φのkptあり)、複数分格はkiukaita(同左)。Kiuas on saunan sydän.「サウナストーブはサウナの心(臓)。」はフィンランドのことわざです。

1枚目の写真は私の恩師の川上セイヤさんの実家のサウナ。サウナストーンは人工石です。写真右側に少し見えているのは年季の入った木製の枕だったと記憶しています。

もう一枚は最も古い友人Jussi宅のrantasauna(岸辺(の)サウナ)のストーブ。このストーブはちょっと珍しい形をしていて、サウナストーンが、ストーブ上部にぽっかり空いた穴の中に置かれています。ひしゃくで水をかけてロウリュ(löyly)を出すのが少々やりずらいのですが、サウナに入っている間にサウナソーセージが(saunamakkara)焼けていく様子を楽しめるという余興があります。

2004年7月20日(Ruovesi)

katiska 梁(簗)やな・・・フィンランドの仕掛け網

2017年8月13日Mikkeliで

もう少し頻繁に豆知識を皆さんに提供したいと思いながら、忙しさにかまけて(私の忙しさなどは知れており、要領が悪いだけなのですが)投稿間隔が空いてしまうのが悩みなのですが、火曜初級コースで毎週紹介している「今日の1語」を投稿に活用すれば良いかもと思いつきました。

katiskaは中級以上のレベルの人でも語彙に入っていないかもしれません。都会ではまず見かけませんが、田舎ではよく見かける漁具です。私はどちらかというと田舎に知り合いが多いので、このkatiskaを岸辺で見かけるとフィンランドの田舎に来た気分になります。色は写真のように、鶏舎などで使う軽量の網そのものの金属色、たまに写真の後ろにあるように緑っぽいもの、青っぽいものもあるようですが、赤いものはまだ見たことがありません。赤ければリンゴ(omena)やハート(sydän)のように見えて可愛いと思うのですが。魚も警戒して簗の中に入ってこなくなるのかな?

katiskaのように-sk-の語尾を持つ語はkpt変化は起こしませんので、「~の」(単数属格)はkatiskan単数分格、たとえば「2つの仕掛け網」は2 katiskaaです。複数変化が難しく、「たくさんの仕掛け網」はpaljon katiskoita / katiskojaと2種類の複数分格が許されており、「仕掛け網たちの」はkatiskoiden / katiskoitten / katiskojenと3種の複数属格が許されているのに加え、ほとんど使われることはありませんが理論上は「第二属格」と呼ばれるkatiskainという第4の形も存在します。

viisi suomalaista vaihto-opiskelijaa 5名のフィンランド人留学生

あっという間に7月(heinäkuu「干し草の月」)を迎えました。またまた当ブログ欄への投稿間隔が空いてしまいました。

先週木曜日には私が非常勤を務める北大のフィンランド語入門コースに5名の留学生がゲストとして参加してくれ、うれしい限りでした。コロナ禍で新しい留学生は全く来道していないのかと思っていましたが、短期留学プログラムで4名が実は4月から北大で勉強しており(8~9月には帰国してしまうのが残念)、2度目の留学で6月末に札幌に来たばかりのPetra Nurmelaと合わせての計5名ということになりました。

せっかく授業に来てくれたので、人使いの荒い私は、受講生との初対面のあいさつ、発音練習などで活躍してもらいました。Petra以外の留学生の名前も記しておきます。

Jutta Joensuuさん
Miisa Myllykangasさん
Alma Ritvaniemiさん
Oskari Nieminen君

懲りずにまた北大の授業、フィンランド協会の月曜入門ハイブリッド授業などを来訪してくれると嬉しいのですが。